音楽室の昼休み 定刻通り鳴り始めたチャイムの音に、真音は視線だけを時計に向けた。 購買に向かう者や弁当を広げる者も見かける今は、俗に言う昼休みだ。 「蜜歌ー、真音ー、いる?」 ノックと同時に扉が開き、声をひそめて音楽室に入って来る人影が目に入り、真音は手を止めた。 防音設備の整ったそこは、開けた瞬間様々な音が流れ込んでくる。 それが不快だったのか、先程まで聞こえていた美しい歌と音色が途切れた。 「あ、雨丸だー。もう授業終わった?」 「うん、二人はいつからここに?」 「四限は無かったからな、ずっといた」 そういいながら、真音は抱えていたバイオリンを丁寧に置き、雨丸が開け放ったままの扉を閉じにいく。 二人も立派な教師だが、暇さえあれば音楽室で過ごしている。 蜜歌の歌はとても評判が良いが、真音の伴奏以外では決して歌わないことが有名だ。 「真音、今日はバイオリンなんだね!」 「ピアノは調律に出す時期だったからな」 大方、それを忘れて二人で音楽室に来たのだろう。 その証拠に、譜面台には楽譜が置きっぱなしだ。 「真音、今日も綺麗な音だったよ!真音もだけどね!」 四限の時間いっぱい真音の伴奏で歌っていたのか、蜜歌は非常にご満悦だ。 真音に抱き着きつつ、雨丸にも喜色満面で同意を求めてくる。 [*prev] | [next#] (←) |