遠い目をして言われるが、よくよく考えたら雨丸は部外者だったりする。


「ちなみに拒否権は無いから」

「嫌です、お断りします。彩花以外とピーする気は無いです」

「……ピーしろとまで言ってねえんだけど」


だんだん平行線を辿り始めた会話に辟易しながら、王太は理事長からの言付けを伝える。
彼女の振りをするか、学園を辞めるかの二択に、雨丸は悩んだ。

「彩花を苦労させるくらいなら、一度のピーくらい……」

「だからピーじゃねえって」


雨丸の勘違いによる悲壮感に満ちた顔に、若干自分が悪いことをしている錯覚に陥る。

「やっぱり無理です!」

「おい雨丸先生!ここ三階!って……早い……」


無理だと叫びながら窓を破って逃亡した雨丸は、持ち前の身体能力をフル活用して彩花の待つ自宅に逃げ込んだ。
ドアを破る勢いで飛び込んで来た雨丸に、彩花は何事かと急いで近寄る。

「めえっ!どうしたの!」

相変わらず紫の着物に身を包んだ彩花に、雨丸は安心して思わず抱き着いた。

抱き着かれた衝撃でその場に座り込んでしまった彩花には、何があったのかわからない。

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