2:君がため、惜しからざりし命さへ。

「ふー、やれやれ」


 黄猿は今はもう使われなくなった客室に入ると、緋乃が端に座っている長いソファ――黒い皮の素肌にぴったり張り付く、スプリングがぎしぎしと軋むソファ――にどっかりと座る。緋乃は肩を、というより全身をびくりと揺らした。見れば、彼女は血にまみれた着物のままで、膝の上で両手を強く握っていた。
 あれから、そう時間は経っていない。


 黄猿は今、センゴクにこの事――緋乃を名目上、自分の補佐官に任命するつもりだ――を説明しに行ったところだった。
 勿論、大反対をされた。烈火の如く抗議をしてきた。
 だが黄猿はセンゴクの剣幕など関係ないかのように、あの間の抜けたというか、のんびりとした独特の口調で言った。

――確かに、海賊は我々海軍にとっては憎い敵ですよ。潰しても潰してもすぐ新しいのが出て来ますしねえ。でも、あの“緋姫”はわっしに従うと言ってるんです。仮にも“億越え”、利用価値はあるんじゃないですかねえ。

 センゴクは低く唸る。

――だが、もしそれが演技ならばどうする?
――わっしが殺される、と?何かあればわっしが全責任を負いましょう。

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