だから、胸が痛いって。 どうしてこんなに寝ても覚めても痛いのに、まだ伝わらないのよ。 昨日にとって明日というには躊躇われるほど、空は数分前と変わらず黒くて何も見えない。私はまた同じことを繰り返して、同じところを同じようにさ迷う。 それでも、また私にも新しい日が来たことに変わりはない。 『いつも通りでいなよ』 頭を離れることのない言葉は私の中でまた大きく悲鳴を上げる。 彼は優しさのつもりで私へ届けたのだ。メールの無機質な黒い文字でもはっきりと分かる。疑いようがない。彼を知っていたら。彼はそういう人だから。 だけれどだからこそ、その優しさは私にとって胸に痛かった。あたたかな言葉のはずなのに冷たさがある。安心するはずの言葉なのに、心がざわつく。 耳を抑えても、目を瞑っても、まだその悲鳴は止むことがない。むしろそうする度に大きくなっているようでもあった。 彼は、こんな私を知っているのだろうか。知った上で、このままでいろというなんて、何て残酷なのだろうか。 「違う」 口にして、声にして、一瞬でも確かに形を残す。 私はその言葉に甘やかされている。守られている。だから今日も私はこんな私でいられるのに……。なぜいつの間にか、いつもその言葉に甘えすぎて守られすぎようとしてしまうのだろう。 だいたい彼は、無垢で無邪気でそして無知な私の役しか知らない。彼の前では私がそう意識的に望んでいるのだから。 分かっているって。彼がまたかわすことも。こんなんだから、いつまで経っても直接なんて言えるわけがない。 それなのに、このままでしかいられないのに、何度も彼に遠回しに聞きたくなってしまう。 それでも私がたった5文字を伝えようとするのは、たった5文字にしか収まらないものを5文字以上にしたいからで。 このまま5文字でいるのなんて耐えられないのに……。 もう、いい加減に寝よう。 明日会った時具合悪そうな顔を見せるわけにはいかない。夜更かししていたと彼が知ったら、また呆れたような顔をして心配そうな目をするだろうから。 『夜更かししている理由を知ったら、彼はどんな反応をするんだろうか』と何かキラキラしたものを孕んだ疑問を胸の中だけにしまう。間違っても窓に映る半透明の私の中に見える星だなんて思わないように。 彼はこれからも都合のいい私のままでいてほしいみたいだから、だから私は今まで通り彼の側に居るためにはこのままで居たいと思い込むことしか許されないのだから。 それでもまたいつか、彼にまた同じことを聞きたくなってしまうことは見えていないふりをした。 だから私はいつも通り 言ってくれなくてもそのままでいるよ |