私たちは光の渦に包まれていた。
“せっかくだから素敵なクリスマスをどうぞ”
なんて胡散臭い雷光の言葉と笑顔に部屋を追い出されて、渋々二人で騒がしい夜の街を歩く。
「みんなにとって、贈り物を貰ったことがあるのは多分当然なんだ」
突然口を開いた宵風にドキッと胸が鳴った。
ときめきというよりも、不安と呼ぶに相応しい。
彼が自分から何かをする時というのは、決まって自ら破滅を招くようなことをする時だったから。
「でも、それを無くすことを知らない僕等は…」
…幸せ、ですって?
心から宵風は呟き、私はそんな彼に残酷な悪戯を思いついた。
「…宵風、誕生日いつだっけ?」
私は宵風が決して答えを言わないことを知っていて質問を投げ掛けた。
宵風は思った通り目を下に向けたまま何も言葉にはしなかった。
どうせ自分でも知らないのだろうなんて事はお見通しだ。
「あー今日の私何でも出来る気がして来たっ」
綻ぶ顔を抑えて無理矢理彼を立ち止まらせた。
「私が決めてあげる。宵風の誕生日は今日で、私はあなたに贈り物をするの」
怪訝に眉をひそめる彼に拒絶を示す時間を与えないよう、一息で言った。
「今日なら私にも禁術、使える気がする」
宵風の術を真似て人差し指を伸ばすと、光を受けた指輪がキラリと反射した。
私の指が示す方向をゆっくりと辿る宵風。
その時の私はまさに、リボンを解く子供の心境。
開けた箱の中に見つけたものは、クリスマスツリーの光をまるごと閉じ込めた二つのビー玉。
何も見ていなかった瞳に光が宿り、私は嬉しくなった勢いに任せ彼の手を掴んだ。
この行動力の源も彼が握り返してくれた気まぐれも、私の自称禁術でさえクリスマスの恩恵にあずかり生まれた代物。
でも魔法をかけたのは紛れも無く私で、この人差し指があれば何でも出来る気がした。
心を鎖した人の感情を溶かすなんて残酷な禁術が、本当に備わってたら良い。
そして今日の一日サンタからの誕生日プレゼントを、彼が喜んでくれる日が訪れますように。
繋いだ手は雪見の家に帰るまでに離れてしまったけれど、その少し温かさの残る手の平で開けたドアの内側に見つけたのは、さっきのケーキなんて目じゃ無いくらい豪華な料理と隣に佇む和穂に、ほどくのが大変なくらい巨大なラッピング二つ……長靴の形をしている事がバレバレの包みを抱えた雷光、俄雨と、無愛想な雪見サンタの姿だった。
宵風を見れば宿った光がまだ消えていない上に、初めて見せるような穏やかな表情。
込み上げるものを抑えるのに必死で、再び宵風の手を掴んでいたこと、気付く余裕はなかった。
バラバラだった私たちを繋ぎ始めた絆。
それは今日から始まる、イルミネーションマジック。
fin.