帝臨 | ナノ

 
※静臨前提、帝臨







臨也さんとキスをする度に、心が騒ついた。
その身を腕の中に抱く度に、自分の中が組み替えられていく。もう、非日常にハマって抜けられない。甘美な味。

まるで麻薬のようではないか。
触れるごとにじわじわと体の中に深く浸透していって、もう決して手放すことの出来ない、ソレ。
大人たちは決まったように言っていたかな、『そんなものに、手を出しちゃいけません。』
だが、制約されればされる程、手を伸ばしてみたくなるのは当然のことでしょう。ね、臨也さん。それを教えたのは貴方ですよ。

だから僕はその衝動に素直に従ったまで。人間も生き物なんだ、本能で生きて悪くは無い。

僕の手は彼を求め、僕の喉は彼を飲み干し、僕の目は彼だけ映す。

あぁ、あなたも早く落ちてきたらいい。
非日常の奥の奥、こちらは随分快適ですよ。














帝人くんが、どうして自分を求めだしたのかはわからなかった。いつからだったろうか、始めに口付けを求められたのは。頑なに拒む俺に、くすりと「処女みたい」と笑った彼はその時には既に、おかしくて。ムキになった俺が自分から唇を合わせた後、しまったこれじゃ彼の思う壺では、と気付いたのはすごく間抜けだった。
しかし彼に会う毎にキスをしていると、思考を組み替えられ。肌を重ねる毎に、「貴方は私のものだ」と彼から伝えられている気がして、満更でもなかった。


いつからだったろうか、帝人くんが常にいるこの家を、出ようとはしなくなったのは。








「帝人くん、帝人くん」
「はい、どうしたんですか臨也さん」


一日中傍にいてもなんの違和感もなかった。だって帝人くんは俺のことが好きで、俺は帝人くんのことがすきだから。
少しでも傍にいないと不安で、一日中彼の後ろをついて回った。狭い室内、移動できる範囲は限られていたけど。

彼の優しい笑顔が好きだ。
「愛しています」と直球に伝えてくる瞳を見るだけで胸が苦しい。男らしくはないけれど、その細い手で頭や頬を撫でられると猫にでもなった気分で。今度撫でられたらにゃーんとでも鳴いてみせようか、彼をからかうのは案外楽しい。

反対に、夜の彼は嫌いだった。
ぐちゃぐちゃにされるのが好きな俺に、彼は殊更愛撫を施すのが好きで。優しくゆっくりし過ぎた愛撫は、時間が経てば経つほどまどろっこしく感じた。俺が何度もはげしくして、と訴えるのに、彼はあの優しい瞳で見詰めるだけだ。

あれ、俺のハジメテは帝人くんなのに。なんでぐちゃぐちゃにされるのが好きだって、俺は知っているのだろうか。
帝人くんは見た目通り中身も優しい。だから彼がベッドでも優しいのは当然だろうに。


“彼”に激しいものを頼むのなら、あってはいるけれど。



「………ぇ、あっ?」


ぽつりと疑問の声が漏れて、混乱。
一瞬浮かんだ金色を、頭を振って飛ばす。

なんだか帝人くんのことを忘れてしまいそうになって、不安になる。じっと彼を見ると、ちょうど彼もこちらを見詰めていて。ふっと大人びた顔で笑った。

「夜起きちゃった赤ん坊みたいな顔ですよ、臨也さん」

目の端から静かに涙が垂れる。不思議、悲しいことなんて一つもないのに。
ぽんぽんと頭を撫でられて、落ち着く。細い手。“彼”とは大違い。



(…………え?)



今度こそ完全に意識が、戻る。
違う違う、俺の求めている手はもっと男らしくて。

そうだ、俺の初めては彼に捧げたのだ。
金色の髪をした、誰よりも優しい獣。俺の愛しい愛しい…彼にっ。



「み、かどっくん……ッ」
「悪夢は、もう、見ませんからね」




『 お、や、す、み 』



キーワードを告げられる。
かくん、と頭が下がり、勝手に意識はフェードアウト。あぁ、駄目だ。また、寝てしまう。暗闇の中、声が聞こえた。











「貴方も、早く壊れてしまえばいいのに」














麻薬
(だから大人は言うのよ、)(危ないものには気を付けなさいって)









最初は帝人くんとの背徳的な戯れを楽しんでいるだけな臨也で、帝人もそれは承知の上だった。なのに、いつのまにか立場が逆転しちゃった帝臨。
そんな洗脳者帝人×ビッチ臨也。

実は俺臨や静臨よりも帝臨が好きである、年下攻め!

静雄はダラーズの手先に苦戦しているとか、そこんとこは適当。





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