捻くれ者の慟哭 | ナノ

 






シズちゃん。
俺は、君のことが好きなんだ。勿論現在進行形で憎かったりもしてるんだけど、きっとそう、死んでも君の事が好きなんだと思うよ。
俺はね、何度も何度も君のことを殺そうとしたけど、それは君が余りにも俺の心を揺さ振ってくるからなんだ。何をやっていても君のことしか考えられなくて、何も知らないで俺の邪魔ばかりしてくる君は、いっそ清々しいくらい可愛かったよ。
君は好きでない奴とこんなことできる訳あるかって言いながら、手を繋いできたし、キスしてきたけれど、それが素直になれない君の精一杯だった、ということは勿論気付いていたよ。なんたって俺は素敵で無敵な情報屋さんなんだからね、または君の「恋人」、でもあるんだけど、………ははっ怒んないでよ、こういう時くらい惚気ても構わないだろ?

…………シズちゃん、ねぇ俺の事、まだ好き?愛してくれてる??

時々堪らなく不安になるんだ。格好悪いよね、自分でも分かってるさ。でもね、俺は言葉って、最高の表現方法だと思うんだ。たとえお互いに思い合っていることが口に出さずとも伝わっていようと、ふとした瞬間に一言口に出すだけで、その関係は証明される訳じゃない?…………俺を信じてないのかだって?まさか。言ったでしょ、俺は君のボーイフレンドなんだから………分かるさ。

俺はシズちゃん、君のことが好きで好きで好きで好きで、堪らないんだ。何で君なんだろうね。もっと簡単な子を愛せば良かった。そうすればこんなに悩むこともなかっただろうに。君のことをもっと知りたいよ。
ねぇ、ねぇねぇシズちゃん。好きだと言って。手を握って。抱き締めて。キスをして。もう離れないでって叫んで。俺に傍に居て欲しいってわがまま、願ってよ。

俺は君を欲しいし、好きだと言いたい、離れたくない、抱き締めたいっ……………だから俺は、君を好きだと言う声を、君の中にずっと残す事にしたよ。
……………シズちゃん、これは愛なんかじゃない、呪いだ。君が俺を忘れないように呪いをかけたんだ。誰にも解けないよ、そうなるようにしてあるからね。
ねぇ、呪いが続く限り、君は俺のことを好きでいてくれると思う?どうかなぁ、俺は分かんないや。………ちくしょう、悔しいなぁ。すごく、悔しいよ。永遠にかかる呪いか確かめたかったのに、もう時間がないみたいだ。………聞こえる?ちょっとヘマしちゃってね……大丈夫、君のところにこいつらは行かせないから、絶対に。……………………ヤバいな、近づいてきやがった………もうお別れかな…うん、最後にこんなしおらしいのは俺たちには似合わないよね。…………………それじゃそろそろ行くよ!またね、シズちゃん!!……………………』



臨也の翻した背中が画面に映って、その背後から誰かの怒号が聞こえ、その映像は途切れる。カセットテープの10分の1にも満たない程の映像だ。
俺は黙ってビデオデッキを操作して、映像時間を最後の方まで早送りした。再生ボタンを押して、暫くは砂嵐。でも辛抱強く辛抱強く待っていると再び映像が現れた。
臨也が自分の顔だけを映るように固定して、レンズに笑いかける。さっきまでは汗一つかいていなかったその額に垂れる汗を見つけて、彼が今どんな状況なのかが分かってしまう。何が“素直になれない”だ。どっちのことだよ、それは。痩せ我慢してんじゃねぇ、俺に、真実を、隠すな!


『…………言い、忘れて、た事が、あるん、だ……』


おい、口端切れてんぞ。そんなに噛み締める程辛いのか。隠すなよ、卑怯だ。お前は最低最悪の卑怯者だ。










『あのね……愛してるよ、静雄、』















砂嵐。
お前、絶対最後の狙っただろう。ちくしょう、このヘタレ。最後でないとそんなことも素直に言えない!最後の映像に気付かれないように、わざわざ早送りすんのもなしだ!!この野郎、ちくしょう、俺は絶対に、お前のことなんて、覚えていてやらねぇ……忘れてやるからな!!このカセットだって早くテープを擦り切れさせてやるからな!こんな壊れやすいもの、すぐに壊してやる!!

あぁずっと見てやるさ…何回も何回も何回も!!そうしたらすぐにてめぇのことなんて、見れなくなるんだ。カセットテープなんて今時使うな、馬鹿じゃないのか。…………複製、出来ないだろうが………………ちくしょ、分かんねぇのはお前の方だ、臨也。ただ、お前の呪いは効いてるぜ……臨也、お前のことが、頭に纏わりついてくる…………。





あぁ、最後だから言ってやらぁ。聞きたかったんだろう、俺の答え。そんなもん決まってんだろ………………………………………………。











「愛してるよ、臨也。」
















捻くれ者の慟哭
(泣きてぇのは、)
((こっちの方だ。))









カセットテープの方が雰囲気出るかなと思ってあえてのカセット………いや、デジカメとかなんか雰囲気ぶち壊しな気がして…。
最初に『がないのは、わざとです。画面内のことだって気付かせたくなかったので。


それにしても臨也くんは、本当に、意地悪だね。







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