ノータイトルA | ナノ

 


※報われてない静サイ







「……静雄…?」


目が覚めたら、傍にいる筈の姿が見えなくて、不意に心細さを覚える。

そうっと半身を起こし布団の間から抜け出して、周囲を見渡せば、リビングから複数の笑い声が聞こえた。床に脱ぎ散らかされた衣服からコートだけ拾い上げて肩に引っ掛ける。

薄く開いていた扉の向こう、リビングのソファで静雄は口に煙草をくわえたまま、テレビを見ていた。画面の横に並立しているスピーカーから笑い声が響いて、静雄しかいない空間を、異様に際立たせている。

静雄の後ろ姿がその光景に相まって、寂寥とした雰囲気が漂っている。暗い、孤独な、儚い空気。

「起きたのか?」

ゆっくり振り向いて、視界に入ったサイケの姿に静雄は目を細める。羽織っただけのコートの隙間から見える白い肌には、愛された証拠が色濃く残り、点在する赤い花が、散っている。

占領していたソファを少し譲ると、素直に腕の中へと納まってくる。
この小さな躯は確かに昨日自分が愛したのだ。快楽に弱く、深い愉悦に溺れて、甘くとろけた声を上げる。
汚いものなど目にしたこともない、そんな瞳をしたこの躯は、きっと抱き合う行為の意味を理解できてはいないだろう。

ずっと愛しく思う彼と、寸分とも違わないこれは、本来なら彼と同じ年齢で、なのにその中身は全く似てはいない、正反対。

人恋しくなった時のみ、サイケは訪れる。最初大泣きしてふらつきながらこの家に訪れてきたのは、一体何時のことだったか。振り返ってみても思い返す事は儘ならない。下しか服を身に付けていない為裸身を晒す胸板へと、無言で顔をすり寄せて甘えるサイケの顎に静雄は手を掛けた。
指先だけで顔を上向かせ、その唇にそっと口付けた。水分が足りていない唇はかさついていて、その弾力も併せ持ち、性欲を燻らせる。

触れるだけでは最早足りず、舌を伸ばして“彼”を蹂躙する。

「あ、んぅ……はぁ…ぅんンッ…」

性急に口内を荒らされ、サイケは身を縮める。情後の躯が再び燃え上がるのは簡単で、空知な中身は耐えることもなく、その貪欲に蜜を垂らし始めた自身を、静雄の腹へと擦り付け始めた。

「ゃっあ…ぁっ、あっあッ……」

艶やかな黒髪をぱさぱさと音を立てながら振り乱し、華奢な躯を震わせる。細すぎる白い裸身は、触れればしっとりと指に吸い付いて、視覚から、触角から全身で煽られる。抱けば夢中にさせる魔力がこの身にあるのは、自分自身で知っていた。

「……可愛いな、」

自身を慰めながらも尚、愛撫をねだり、口唇に啄んでくる動作にその細い肩を掴んでソファに引き倒した。

「んぁっあ……」

深く躯を重ね、口唇を重ね合わせる。先程と同じように、いやそれ以上に激しく舌を絡ませ合いながら、コートを床に落とし、自身も服を脱いでいく。家に上がらせた時には外させていたヘッドホンが、寝呆けていたのか再び付けられているのを目に留めて、軽く舌打ち。

「おい、ここにいる間はつけんなって言っただろ」

コードが絡まるのも、部品が損傷するのも気にせず、派手な音を立ててヘッドホンを投げ捨てた。荒い音をたてたそれは、静雄の苛立ちを表しているようで、サイケは身を震わせた。

「あっ、あんッ…ご、ごめんねっ…、」

サイケの謝罪に別に、とだけ返して、静雄は愛撫をさらに激しいものにしていく。

「ひゃぁぁ……はぁ、ぅ、…んンッ」

尖り始めた胸の突起を、円を描くように弄ると、サイケが嬌声を上げる。白い喉が仰け反り、細い背がしなる。自身は二人の間に挟まれ、絶えず愛液を滴らせている。裏筋を伝ったそれは腹の中央の窪みに溜まり、サイケが躯を震わせる度に後孔や背筋へと静かに零れていく。そんな些細な刺激、だがそれだけでも開発され尽くした躯には毒で、サイケは耐え切れず、腰を浮かし揺らめかせては再度、静雄の腹へと自身を擦り付けてしまう。

「ぁぅう……はぁ、さわって、ね、ぉねがいぃ…」

まだ自身にも触れてはいないのに、今にも達してしまいそうな表情をサイケが覗かせた。雄の本能を擽るそれは、逆効果なのだとサイケには分からない。

「…本当淫乱だな……」

普段覆い隠している耳朶に、意図的な低音で直接囁く。同時にサイケの自身へと手をやって、下から上へとゆっくりと扱くと、サイケは大袈裟な程、躯を跳ねさせる。

「ふぁッ…、やっらめ………、ひもちいいのぉ…ッ」

剥き出しの白い足が、快楽に耐えるようにソファのカバーを蹴る。その間も止まらない静雄の手淫に、サイケは何も考えることが出来ず、やがて限界が訪れようとした。

「ひゃっ、やぁあぁ……イく!イかせてぇぇええ」
「早いな、………まぁ一回だけイかせとくか……ほら、よ!」

速度を増した摩擦にサイケの自身が脈打つ。全身から汗が吹き出し、目の奥が真っ白になって、ショートする。
だが、サイケは二人の間であった誓約も、目の前にいる男が誰なのかも分からなくなってしまい、過ちを犯してしまう。


「きゃぁあぅう!!イく!………“津軽ぅう”!!!!」
「………ッ!」

瞬間、静雄の動きが止まった。
サイケはその瞬間、絶頂を迎えた余韻で頭が回っていなかったが、徐々に理性を取り戻し、自分がしてしまったことの重大さに気付いた。

「あっ………し、静雄……ごめんなさッ」

ぱぁんっと音と衝撃がきて、数秒経ってからぶたれた頬がじんじんと熱を持ち始めた。静雄は無意識に殴ってしまったのだろう。はっとした顔でサイケを見つめたかと思うと、くしゃりと顔を泣きそうに歪め、呆然としたサイケの躯を力強く抱き締めた。

「ごめ、ごめんなサイケッ」
「………ううん、静雄は悪くないの…サイケが悪いの」

しがみ付くかの様にして、抱き締めてくる静雄の頭をそっと己の肩口へと寄せ、サイケは謝罪する。それが殴ったことに対してではないという事が分かっている静雄は黙ったままサイケの首筋へと鼻を寄せる。

この身体は、自分の物でもなんでもない。自分が欲しいのは何時だってただ“彼”のみで、その願いは叶いそうになかったからこうするしかなかったのだ。
偽りだとは、分かっている。だが理解は出来ても、認める訳にはいかないのだ、だから………サイケに縋るしかなかったのだ。


「もう、俺といる時は、………呼ばないでくれ………“臨也”…」
「………うん、わかったよ“シズちゃん”」






(だから、静雄も“俺”だけを見て)











静→臨、津←サイ前提の静サイ

片思い同士で、相手をそれぞれに見立てて慰めあう静サイはどうですか。
静雄の家にいる時は名前を呼んだりはNGです。サイケは臨也の様に黒いコートを着て、ヘッドホンを外して静雄の家に来ます。静雄もサイケの前ではバーテン服を着ない様にしています。
歪み愛ってか利用し愛!


途中で全く違う設定の慰め愛静サイも思い付いたので小ネタとしてあげますね






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -