▽まさかのヨシヨシ臨
「駄目だよ、吉宗くん」
白いシーツが揺れる中、唇に人差し指を押し当てて、彼は笑う。
「どうして、です」
「痕とかは目立っちゃうから、ダメ」
特にここにあるのとかはね、と唇に押し当てていた指を首筋やうなじに這わせてみせる。嫌に性的、煽られる。
「いいじゃないですか、別に」
「いけないよ、俺は君のモノではないからね」
嗜めつつ口角を吊り上げるその動作、赤い唇が唾液でてらてらと光り、網膜に残る。暫く忘れられそうにない光景。
「…じゃあ、煽らないでください」
「ふふっこんなので煽られる君ってさ、とっても可愛いね」
くすくすと笑われて、悔しい。
頬へと伸ばされた指を齧り、歯形を残す。大した力は入れてないので、少し赤くなっただけのそこはすぐにでも消えてしまうだろう。
「……いけない子だね」
「俺がそうなら、臨也さんはいけない大人だ」
「そうかもしれない、でも俺は゛待て゛と言った筈だ」
「駄犬はマナーを知らないんです」
臨也さんの依頼で調べた探偵紛いのこと。報酬に金をいらないといった俺に自らを差し出したのは彼自身だ。俺はそれを拒否しなかっただけ、いけない遊びに手を出したイタイケナ少年だ。
打ち付けた程度に赤くなった薬指の付け根の痕に、臨也さんが舌を這わす。
数時間も経てば消えるその痕は、俺みたい。あなたにとって俺は一時の気まぐれでしかないのだから。
はぁ、と溜め息を吐きながらベッドから腰を上げる。脱ぎ捨てていた制服の上着を身に着けている俺に彼は首を傾げた。
「もう、煽られないんだね」
馬鹿にしたように、笑う彼を横目に見てまた溜め息。
「貴方が、そう、躾けたくせに」
これ以上の会話は必要ない。臨也さんの顔を見ずに扉を閉めて、オートロックだと知っている部屋を出て行く。
エレベーターに寄りかかりながら目を閉じる。聞こえなかったはずの彼の一言が、耳に響いている気がした。
(おりこうさん、)
彼は気付いているだろう、齧った指が左手の、薬指であった必要性について。
お子様、と自分で自分自身を笑いながら、どうしようもなく虚しかった。
ゲーム発売おめでとう、ちなみに予約済みですがまだ未プレイです。
吉宗くんがどんな人物とか知りません。「探偵さん」って呼び掛けてる臨也のスチルを見ただけで書いたので捏造!