プロポーズ大作戦 | ナノ


※誰雄と誰也でお送りします
※友人からのお題「ケーキ、パフェ、甘い話」














居心地が悪い。
というかなんでこんな場所に男二人、しかも臨也と俺という最悪最低な関係にある二人で来ているのだろうか…周囲のテーブルからは俺たちを見て、恐れたような呻きと興奮したような鼻息とで騒ついている。
肩を叩き合いひそひそと耳を寄せては囁いて、「かわいいー!」なんて手を叩きながらはしゃぐ女たちの目は、謎の熱視線や嬉々とした好奇の目に満ちていて、正直に言うとなんか怖い。

どこに目をやっても誰かしらと目が合いそうで辟易する。だのに俺と共にその熱視線に晒されているもう一人は居心地の悪さなど感じていないらしい。畜生ノミ蟲が、後で覚悟しとけよ。

ぎらりと睨み付けてやると俺の視線には反応するのかやっと携帯から顔を上げる。実は俺をここまで引っ張ってきたのはコイツだ。しかし臨也は席に着いた途端、携帯をいじり始めやがったのだ。死ね。殺す。

「本当シズちゃんたら単細胞な上空気も読めないのー?こんなにお洒落な店で俺含むか弱い少女たちがたくさんいるっていうのに、そんな暴言吐かないでくれるかなー?」

うぜえ、今コイツを百回タコ殴りすることが決定した。そしてなにがか弱い、だ。笑わせんな。

「いいじゃいかーちょっとくらい!もう、久々の二人きりのデートなんだから怒んないでよ!」

周りからきゃーっという黄色い悲鳴。黙れ、これ以上喋んな。つかお前分かっててやってんだろ…安心しろ、タコ殴りは百と言わず二百でも三百でもサービスしてやるからなぁ…!

「…でも本当さー楽しそうにしてよ…?俺、シズちゃんとここに来るの楽しみにしてたんだから、さ」

臨也は伏し目がちに微笑んでフォークとナイフを手に取った。
明らかに落ち込んでしまったその様子に周りの視線が突き刺さる。ノミ蟲の背後にある席に座っているコギャルなんて俺に向かって中指を立たせてきた。お前、女だからって容赦はしねぇ…今度会ったときはぶち殺す。
しかし臨也のナイフを操る手つきを見てみると、流石の俺でも焦る。本来パンケーキにナイフは当ててから引くようにして切るもんだが、コイツは垂直に突き刺して皿が傷つくのも構わずに力任せに手前に寄せて引きちぎるかのようにして切っている。
育ちはしっかりしていてテーブルマナーもプロ級なコイツがそんな汚い食べ方を普通するわけがない。これは怒っているのだと、拗ねているのだとはっきりと俺に伝えたいのだ。

不細工に切れたパンケーキの破片を口に詰め込み、頬をその大きさに膨らませながら臨也は食べる。小さい手のひらサイズなネズミ科の愛玩動物を思い出して少し和む。

もふもふと咀嚼しながらもちらりとこちらを時々ジト目で伺う臨也の頭に、つい手が伸びそうになる。 しかしここで撫でてもして機嫌を損ねられれば後が面倒だ。
ちっと小さく舌打ちをしてから、俺はちょうど近くを通ったウェイターにこの店で一番人気のデザートを、と頼んだ。

「何…シズちゃん、自分だけデザートを食べるの…?………ほんっとう最悪だよね!有り得ないよ!!」

自分の彼女がこんな怒ってんのに!と臨也が食器を机に叩きつけて怒鳴った。幸い食器は割れも罅も出来ずに済んだが、周りと俺たちの間には大きな軋轢が出来てしまった。 ぷるぷると細い肩を揺らして小動物が吠える。まだ何も言ってねぇじゃねぇか…俺が何か仕掛けているとも知らずに可愛いもんだなぁ。

修羅場な俺たちの近くで、出来上がったらしいケーキとパフェのセットを手にウェイターがおろおろとしていた。そいつを手を振ることで招き寄せ、潔く運ばれてきたそれを、すでにパンケーキの食器が片付けられた臨也の前へと並べる。

……何の真似、と愚図りながら席に座りなおした臨也にフォークを使ってケーキの真ん中を指し示す。するとそこには「Shizuo swear eternal love to Izaya.」の文字が。直訳すると「静雄は臨也への永遠の愛を誓う」ってもんだ。


どうだ、と所謂どや顔で臨也を見つめる俺と目を合わせ、一瞬、臨也が茫然とする。そして数秒間固まり、いきなり吹き出した。

「ば、ばかなんじゃないの!シズちゃん!」

馬鹿呼ばわりされたのはムカついたが、そういった臨也の顔どころか耳や首までも真っ赤なのを見て俺は満足した。今回だけだぜ、マイスウィートノミ蟲。

臨也が席を立って俺を見つめるので、俺も席を立ち臨也の方へと回りそのデザートよりも甘く、危険な薫りを放つ体を抱き締めた。

うぎゃーっと何かの怪物みたいな悲鳴が聞こえたが気にしない。店内の人全てが注目する中、俺は宣言した。

「俺たち…幸せになります!」

おめでとー!とみんなが祝福してくれて、俺たちは口付けを交わす。祝福の言葉のなかに、ひゅーひゅーという野次も交ざったが、俺がキレるようなこともなかった。
















店内に漂う甘ったるい匂いは、プロポーズに使用されたケーキとパフェを食べる俺たちを中心に形成されてる。ちなみにパフェはというと、臨也のあーんにより俺と二人で食べたのだが、あの細長いスプーンが下のコーンフレークを掻き分けた時に銀色の指輪に当たるように作らせた。
指輪をすくい上げた時の臨也は感激からか涙を目元に潤ませていたが、今までで一番嬉しそうだった。
それを見て周りはまた囃たててきたが、もう俺たちにとってそれは雑音でしかなかった。











昼下がり、二人でついたお洒落なカフェのテラスで、温かい視線と恐れるような視線に囲まれながら、俺のプロポーズ大作戦は成功を迎えた。

















congratulation!!!!














ケーキとパフェと甘い話
プロポーズ大作戦〜fin.〜









とりあえず甘いシズイザ書きたかったんだけど…、うん、何とも言えない……人生で初めて甘い小説書きました、暗い話専門の青谷です








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