噎せ返る程の愛の空気 | ナノ


※グロ、切断表現。静雄が強靭ではなく普通の人間なのです、だから肉が柔らかいのです!でも暴力すぐふるっちゃうから、強靭じゃないのに嫌われ者だよ!だからなんか狂ってるよ!つらいね!
※死ネタ
静雄がずっとかわいいかわいい言ってる。



「俺はね、シズちゃんの、その、¨いざやだけが盲目的に愛しい¨って訴えてくる瞳がいちばん好き。」

 にやにやと綺麗な瞳の、目尻を少し下げて臨也は笑う。
 その頬に切断したばかりの俺の腕の断面から血飛沫が飛んで、臨也の美しさをその赤が更に引き立てる。臨也には、赤がとても似合う。
 臨也は優しいから、こんな嫌われ者な俺にさえ慈悲を掛けてくれる。

「シズちゃんは、すごくいい子だね。ふふふ。野生のライオンを飼ったら、こんな気持ちになるのかな」
 品良く少しだけ口角の上がった唇から唱えられる言葉は、どんな内容でも魔法の言葉。
 臨也の声は聞いていてとても気持ちがいい。
 あぁ、こんな、俺でさえも相手にしてくれている。
 柔らかく微笑む臨也に向かい合って頭を撫でられるまま、うっとりと俺は有り余る幸福に浸る。

「シズちゃん。君の腕は綺麗な筋肉がついているね」
 にこにこと笑う臨也は持っていた左腕をテーブルにおいて、ズ、ズズッ…と音を立てながら大振りな鉈を引きずった。

 重そうだな、持とうかそれ。と聞くと、腹を抱えて笑い出した。かわいい。
「あはは、やっぱりシズちゃんさいこー……うん。持ってくれる?これ、俺の腕にはちょっと重すぎて…」
 笑いすぎて引き攣った声で、鉈でギコギコやられた後に言うセリフじゃないだろ……と苦笑しながら渡された鉈は、確かに結構な重量があって、ずしりと持ち上げる俺の右腕に負荷をかけてくる。
 重そうに持っていた鉈が無くなり、足取り軽くなった臨也はすたすたと俺を置いて鼻歌を歌いながらリビングから出ていく。
 その際にテーブルに放置された物を一瞥していたが、すぐに興味を失ったように視線を逸らしていた。

 片腕になったこと、多量な出血によりよろめきながらも、残った片腕で預かった鉈を抱えて俺も臨也を追って歩き始める。
 辿り着いた寝室では、一足先に着いた臨也が枕を抱えて足をバタつかせて遊んでおり、入室した俺に気付いた途端、臨也の顔が明るくなる。
 そのかわいさに、ドキっとした。なんて綺麗な人なのだろう。
 ぶんぶんと音を立てながら腕を振って俺を呼ぶ臨也。抱えたままの鉈の扱いに困っていると、そのまま持ってきてよと微笑まれた。
 ベッドの上に寝転ぶ臨也の横に腰掛けながら、その表情を伺う。目が合うとにこっと笑って、首に腕を回してくる。
 自然な動作で俺と臨也の唇が合わさり、くちゅり、と厭らしい音の立つ接吻をかわす。
 舌と舌をざらざらと擦り付け合い、とろりと滴る唾液を啜る。
 恍惚とした面持ちですぐ目の前にある美しい顔を見詰めていると、そっと唇が離され、その流れのまま臨也は俺の左腕の欠けたところへと、視線を移した。

「今更だけどさぁ……痛くないの」
 そろ、と白く細い指先が骨の覗く肉片の先をくりくりと弄繰り回す。
 止まっていなかった血液が、再び傷口を広げられたことにより、ぶしゃあと音を立てて溢れ出す。
 俺の赤黒い血液が、真下にいた臨也の顔をびしゃびしゃと染めて、まるで下品な犬のマーキングみたいで、興奮する。
 「わっ!すっごい勢い……目に入るじゃんか」って抗議するから、「ざまぁ見ろ」と残った右腕で臨也の額をこずいて笑い合った。

 けらけらと馬鹿みたいに笑うのは、楽しい。
 すぐキレてしまう俺にはおおよそ友人とか呼べるような人間がいなかったから、こんなの知らなかった。
 臨也は俺が今まで知らなかったことを、たくさん教えてくれるから、本当に優しい。
 臨也と出会えて、良かった。

「あーあ、びしゃびしゃ…お気に入りのベッドだったのに」
 しょうがないけどさぁ…と唇を突き出して残念がる。
 それでも臨也、お前は今まで見てきた中で、一番今の姿が綺麗だ、と俺は思う。
 血が固まり始めた臨也の顔の各所に唇を落としながらそう告げると、照れくさそうに笑った。かわいい。

「そういうの恥ずかしいからやめてって言ったよね…。……ほら、俺の腕も早く同じようにして?お揃いが良いんだから」
 接吻してる間に横に置いて放置していた鉈を指し、妖しく笑う。
 あァ…!本当こいつはかわいい!!!
 わかった、と片腕で鉈を振り上げながら了承した。きっと今の俺は気持ち悪い位、いい笑顔をしてんだろう。








「うっわぁ、ひどい臭いだな〜〜」

 警察から連絡を受けて、この血生臭い部屋へとやってきた僕は、黄色いテープで仕切られた部屋の中へと勝手知ったる、とばかりに足を踏み入れた。
 発見された時から特に手を加えていないという臨也の部屋は、玄関からずっと夥しい量の血液痕が続いていて。ファイルによるとそれは寝室の遺体のところまで伸びているらしい。
 ……よく途中で死ななかったね?

「全くすごい生命力ですよ……」
 僕の職業を何となく察しながらも、黙認してくれている物分りの良い刑事が苦笑する。
 池袋の名物は、最期までやってくれるなぁ。なんて笑うから、ああこの人も二人とは既知の仲だったのかと初めて知る。
 血痕を避けながら廊下を通り、リビングに入ると、テーブルの上に人間の腕が放置されていた。
 黄色いテープで何重にも周囲を囲まれたそれは、生きていた人間のものとは程遠い印象を受ける。
 変な話、見た目はすごいグロいんだけど妙に幻想的っていうか。非現実すぎて、神話でも見てる気分。
 刑事の話によると、あれはなんと、かつて僕の同級生だった”平和島静雄の左腕”らしい。
 言われてみれば見覚えのあるものに見えてくるんだから、人間の脳って単純だね。
 触っていいですか、と思わず職業柄から聞くと、駄目に決まってんだろ坊主、と頭を叩かれた。
 もうそんな年ではないんだけどね!僕が若々しいだけか!ふふ!

 部屋の隅でおええと吐き始めた捜査官が一人。現場の指揮官らしい人がその瞬間怒鳴った。
「おいっ!!!!現場を乱すなっ!!!!!!!」
 ……へェ。これも立派な事件現場となるんだな。
 何度か訪れたことのある友人の部屋が、事件現場となるだなんて、なんか、変な感じだ。

「それじゃあ…、そろそろ人騒がせな奴らでも見に行きましょうか」
 本人かどうか確認してもらわないとダメなんです、と刑事さんが疲れた顔で促す。
 ばたん、と大きく扉が開いた寝室の真ん中。折原臨也と平和島静雄はそこにいた。

 お互いに片腕を切り落とし、残った片腕で相手を抱きしめて、血塗れ大振り鉈を背中に生やして二人は逝っていた。いやー聞いてはいたけど、この光景は何とも見事だ。
 二人とも顔に掛り過ぎた血液が完全に固まっていて、その表情は読み取りにくいけど、なんとなく、きっと極上の笑みを湛えているのだろうって思った。

「全く、見せ付けないで欲しいですよ……」
 呆れたように刑事は笑う。
 何がそんなにあいつらを追い詰めたのかねぇ、と頭を掻きながら捜査に戻り始めた彼に、礼を言って、二つの骸に近寄った。
 彼らが異常だったとは気付けなかったから、僕にもその理由は分からない。
 でも、二つの骸は精一杯に「こうすることが私たちの幸福なのだ」と主張していて。その理由を追い求めなくてもいいのではないか、と思える程愛し合っていた。
 
 死んだ彼らに用は無い。
 仮にも友人だと思っていた二人だし、これでも来る前は「死んでるのを目の当りにしたら、ちょっとは感傷的になっちゃうんだろうか!」とわくわくしていたというのに。
 なんだか無性にイライラしてきたし、いい加減頭痛を促すような血と吐物の臭いにも嫌気が差してきた。なんでこんなとこ来るの了承しちゃったんだろ、僕。
 案内してくれた刑事に挨拶して、本人確認出来たことを伝え、くるりと後ろを向いてさっさとその場を立ち去った。

「あ〜〜セルティ!!!!早く君とイチャつきたいなァ!!!!!ふふ!」

 頭の中は既に愛しい彼女のことでいっぱいだ!
 これも、一つの愛の形ということで。
 僕には理解しきれないけど!






(補足、私が嬉しい裏設定と裏話)ごめんなさい長い。
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 えーまずは。
 静雄は暴力的なだけで普通の人間なので、臨也に全力で愛されていました。(いいなぁ)
 まぁその愛が向いてるのは静雄だけじゃないんですけど。
 でも愛しい静雄が他の人から悪く言われるのはつらくてつらくて、臨也は堪らなかったんですね。
 どうしたらみんなが幸せになれるんだろう?って聖母は悩んだんですが、静雄に「いざやだけいればいい」って言われた瞬間、もう愛しさがクライマックスになってしまって、「他の人間は他の人間が愛してくれる。それはおれの役目じゃない。でも静雄を愛せるのは俺だけだ。それはおれだけの役目なんだ」って気付いちゃう。
 んで心中。
 臨也が人間を好きなのって、多分体温があるってのも理由だと思う。魂を感じられるから。
 だから切り離した一部分には一気に興味を失っちゃうんだろうなぁ〜。かわいい〜。
 あとなんで片腕だけ切り落としてんの?って質問にはあれだ。
「先に大量失血してた方が身体を大鉈が貫く痛みにも耐えられるだろうから」って適当な答えを返しておこう。何にも考えてなかったこの時。
 静雄はいいな幸せだな〜私もこんなに臨也に思われてみたい、って思いながら書いたような記憶がある。なんたって初めて書いたのは4年以上前。
 久しぶりにサイト弄ったらこれ見つけたんだけど、好きなテーマなのに文章めちゃくちゃで嫌になって今回書き直しました。
 あ〜楽しかった!(15.5.15)



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