キミのおこした奇跡side S


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VS服部平次 ゲレンデの対決


真相


「ど、どこにかけてるの?」
「山形県警の刑事さんのケータイ!」


さっき念のため聞いといて良かったぜ!


「何もかもわかりましたよ!箕輪さんを自殺に見せかけて殺害した人が誰かと言うことが。その殺人を可能にしたトリックも全てね!」
「はあ?」


電話口で驚いたような声が響いた。
…声からしてあの刑事じゃなく、若い方の刑事だな。


「あの状況で殺人は不可能。ほんとに箕輪さんが1人でリフトに乗っていたとしたらね」


そう、これは雪山、そしてあの人だからなし得た犯罪。


「あのバッグの中には雪が詰まっていたし、とても大人が入る大きさでは…」
「違いますよ。入っていたのは雪の詰まっていたサイズよりワンサイズ上のバッグ。それならホテルで売っていますよ」
「そんなバカな…」
「バッグに入っていたのは雪でもなんでもなく、箕輪さん本人だったんですよ」
「じゃあバッグを担いでいたのは?」
「あれが犯人です。箕輪さんの顔は大部分が髪で隠れていますし、あの時はサングラスをかけていた。カツラをつけてニット帽とサングラス、スキーウェアを着れば彼だと錯覚させることは出来ますよ」


そして、本人がバッグの中に入ってファンとの受け答えをしていたからこそ、皆あの変装が本人だと錯覚した。


「プライドが高いからこそ、入ったんです。恐らく彼のスキーの腕がプロ級だというのはうわべだけを飾った偽りの姿。嘘だったんでしょうから」
「う、嘘?」
「多少は滑れたかもしれませんが、プロ級ではないと思いますよ」


だからこそ、スタントを起用し、あの映画で1つのシーンから小道具の微妙な違いが生じた。


「じ、じゃあその代役って、」
「ええ。その代役を任され箕輪さんを担ぎ、リフトの上で彼を殺害した犯人は、スタントマンの三又さんです!」
「…ほんとか、それは?」
「でも、映画で代役をやったのは同じスタントマンの水上さんだと思います。映画の滑りと今日の滑りは違っていましたから。恐らく水上さんが亡くなる前に、三又さんが密かに代役を引き継いでそれを今回のリフト上の犯行に上手く利用したんでしょう。そう。リフトの上でバッグに入った箕輪さんの頭だけを出して抑えつけ、コメカミに弾丸を撃ち込み箕輪さんをバッグから出し座らせ拳銃を握らせ、自分はバッグ持って飛び降りたと言うわけです。このリフトは地面との高さが3メートルくらいしか離れていないところが2箇所ありますからね」


リフト乗り場で右側に乗ったはずの箕輪さんが、降りるときに左側に座っていたのが何よりの証拠。


「銃声はロケット花火です。導火線を延ばし時間を稼ぎ、滑って誰かと話している時に音が鳴れば自分のアリバイの証人が出来ます。…その証拠にリフト付近で少し焦げたような後があるペットボトルを回収しました」
「なんだって!?」


バッグも紐を水で凍らせ、残りの足りない分を稼ぎストックで引っ張り上げた。


「ストックの輪が2本とも逆さだったのは、片方だけだと目立ってしまうから」
「でも、リフトの上からそのバッグが見えるのか?前のリフトが見えないくらい吹雪いていたんだろう?」
「知っていますか?リフトの間隔は6秒以上開けないといけない。リフトのスピードは秒速1.5メートルから2メートルでリフトの間隔は10メートルくらい離れていることになる。10メートル先のものは見えなくても、3メートル下のバッグは見えますよ。そこにバッグがあるとわかっているならなおさらね!」
「で、でも証拠は?」
「ちゃんとありますよ!三又さんが立石さんと会って、そのまま彼女とそのロッジで事情聴取を受けているんであればその下に着ているはずです。箕輪さんと同じスキーウェアを!」


追い詰められた三又さんが、動機を告白しているのが、電話越しでも聞こえた。
…復讐は復讐を呼ぶだけ、か。
ほんとにその通りだな。


「その少年と全く同じ推理を、全く同じタイミングで話していたのですが…」
「えっ?」


同じタイミングで、同じ推理した中学生探偵だと!?


「ちょ、ちょっと新一!警察のところに行かなくていいの?その中学生探偵に会えるんじゃない?」
「会いたくねーんだよ!」
「なんで?このペットボトル持って自分も事件解きましたー!って会ってくればいいじゃない!」
「…俺はあおいが父さんから聞いた、足をくじいたフリをして籠に入ってたっていう雪女の話を聞いてやっと箕輪さんがスキーが上手なフリをしてバッグに自分から入ったんだって気づいたんだ。コイツは1人で解いたその中学生の事件。俺のじゃねーよ」


今の俺は、あおいが父さんからヒントを聞かなかったら解けなかったんだからな!


「て、わけだから、蘭そのペットボトル警察に届けてくれ」
「…いいけど、新一は?」
「コイツ!」
「え!?私!?」
「…ここまで登ってきたから、さっきよりも足引きずってんだろ!」
「うっ…」
「ほら!」
「えっ!?」
「おんぶ!山道なんだからさっきみてーに抱きかかえて降りたら危ねぇだろ!」
「…や、私歩け」
「そーよ!おんぶしてもらいなよあおい!」
「ええっ!?…や、私ほんとに、」
「さっさとしろ!」
「………お邪魔します」
「おーぅ。んじゃあ蘭、よろしく頼むわ」
「うん!新一も気をつけてね!」


人1人おぶって雪道を降りるのは至難の技。
自然と口数が減る。


「工藤くん、」
「あー?」
「きっともうすぐ、優作さんにヒントもらわなくても推理できる名探偵になれるよ」
「…ったりめーだ!」


もうオメーが心配して父さんに電話しなくて済むような探偵に必ずなってやるよっ!

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bkm

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