Clover


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2度目のバースデー


フライング・プレゼント


「このドロボー」


4月も中旬に差し掛かり、快斗の1人ロミジュリごっこも落ち着いたこの頃。
いや、朝は落ち着いたんだけど「じゃあ放課後は俺タイム!!」とかわけのわからないことを言われて、毎日毎日飽きもせずうちか快斗の家に強制連行される日々が続いていた。
そしてただ今江古田市内にある工藤家別宅マンションで、快斗様と去年の春に公開されたオッサンズの上映会中です。
工藤家マンションのリビングテレビは54インチなんだけど、映画見るには小さいという有希子の拘りから購入したホームシアターを、私の部屋に用意して100インチの巨大スクリーンで鑑賞している。


「俺が捕まるわけねぇだろ」


オッサンズはドロボー映画なのだけど、要所要所に恋愛要素も散りばめてある。
そしてハリウッド映画で恋愛要素を含むということは、当然あるわけだ。
ラブラブにゃんにゃんシーンが。
そしてそういうシーンがあるということは、


「レイチェル!あぁ、レイチェル!!」
「あん!ビリー、もっと!」
「早希子」


スクリーンの人たちと一緒に発情する男が出て来るわけ。


「私今映画見てるんだけど」
「後でつきあってやる。こっちが先」
「…もう少しで終わるんだけど…」
「無理、待てない。…早希子」
「…んっ…」


そして気がつけば私もスクリーンのお兄さんお姉さんと一緒に発情してしまうわけだけど。


「早希子、こっち」


快斗が隣に座っていた私を抱き寄せ、自分の足の上に向き合う形で座らせた。


「早希子可愛い」


快斗は行為が始まる直前や始まってすぐに必ず私を可愛いって言う。
前に一度それについて聞いたら、とろけそーな目で俺を見るのがたまらなく可愛いからっ!ってよくわからない答えが返って来た。
でも快斗がこの音程で可愛いって言うと、ああ、これから1つになるんだ、って思えてドキドキする自分がいる。


「早希子」
「んっ…快、斗…」


服も胸の上まで捲し上げられ、ブラが丸見え。
快斗の手が優しく胸を包み込んだ。


「黒羽はここかーーー!!?」


包み込んだ瞬間、バターーンと部屋のドアを開け放った魔王様の声がした。


「…」
「…」
「…」


私はというと。
快斗の足の上に跨がり、快斗の服を脱がそうとシャツのボタンに手をかけ、今にもちゅうしようとする距離にいるわけで。
快斗はというと。
ちゅうに答えようとしつつ、下着丸見えになった私の胸を揉み上げようとしてるわけで。
魔王様はというと。
ドアを開けたことでその行為を真横から凝視してしまったわけで。


「…テメー今日死んでくれんだな?」
「…ええっ!!?その日本語おかしくねぇか!?フツー死ぬ覚悟あるのかとかじゃねぇ!!?」
「オメーの覚悟なんざ聞いてねーんだよっ!今死ねっ!!」


…ああ、また始まった…。


「ち、ちょっと待てよっ!オメーいっくら兄弟でも妹の部屋にノックもなしに入ってくるのは非常識だぜ!?」
「何が非常識だっ!!こんなの送りつけたオメーに常識について語られたくねぇんだよっ!!!」
「あ、それ気に入らなかった?」
「そういう問題じゃねーだろ!!!!」


新一が「工藤新一」に戻ってから何回かオフで快斗と遭遇した。
ちなみにオンは探偵と怪盗。
大抵はこんな感じになるんだけど、今日はいつにも増して新一の機嫌が悪い。
新一がさっき「こんなの送りつけて」と叫びながら投げつけた袋を床から拾った。
快斗はこの間、新一が蹴り出すキックを「ほっ!」とか「はっ!」とか言いながらまるで大道芸のように身軽に避けていた。


「…何コレ?」


それは快斗から米花町の自宅、工藤新一宛てに送られたもので、品名には「俺からの愛が篭った誕生日プレゼント!」って書いてあった。
…まだ誕生日先なんだけど。
てゆうか品名にそれって…。
ちらっと新一を見ると蹴りだけじゃなく、パンチも繰り出している。
蘭とつきあうようになってから本格的に体術も学んだらしい。
2人は私の存在をすっかり忘れてじゃれあっている。
いや、じゃれてないのかもしれないけど、こういう現場を見るとなんだかんだで仲良いなぁ、と感じてしまう。
本人、特に新一には、迷惑な話かもしれないけどね。
…どうせ新一たち当分あのままだし、この袋新一宛てだけど、ちょっとだけ見ちゃおう。
そんな出来心で袋を開けたのが間違いだった。
袋の中からはどこかで見た覚えがあるような気がする四角い箱が出てきた。


「…」


顔がひきつったのが自分でもわかる。
箱は中身を確認するまでもなく、表に何が入ってるのかわかりやすく書かれていた。


超うすうす ゴム感ゼロの爽やか青りんご味


…あのバカっ!!
新一の誕生日プレゼントに何送ってんのよっ…!!
よく見ると紙が箱に貼られていて。
その紙を自分の正面に持ってきて見た瞬間、自分の彼氏のバカさ加減に泣きそうになった。


ご利用は計画的に!


そのメッセージの最後にはちゃっかりキッドマークが描かれていた…。
つまりあれだ。
キッドマークまで描いた直筆メッセージカードつきコンドームを新一の誕生日プレゼントに送りつけたわけだ。
…ごめんね、新一。
でもわざわざこの箱持って米花町から江古田のマンションに乗り込んで来るあたり、やっぱり新一と快斗は仲が良くなってきてるんじゃないかって他人事のように感じた。


「だってオメーこれは大事なことだろ!?」
「オメーにゃ関係ねーことだろーがっ!!」
「バーロォ!俺は未来の弟として兄ちゃんが高校生探偵から高校生お父さんになることを心配してだな!」
「それが余計なお世話だっつってんだろーっ!!!」


…なんとなく、新一、頑張って。
って応援したくなった。


「大体俺の誕生日はまだ先だっ!」
「えー?だって蘭ちゃんとつきあいはじめて初めての誕生日だろ?だから早めに送ったんだって!」
「それがなんの関係があんだよっ!?」
「だってー!オメーには事前練習必要かもしんねーじゃん!先走って失敗したら蘭ちゃんかわいそ」
「テメーにわざわざ心配される必要はねーんだよっ!!」


リアル活劇。
なんかもう、どうでもいいや。


「オメーこれは男のエチケットだろーがっ!弟として兄ちゃんの失敗を」
「だから気安く兄ちゃん兄ちゃん言うんじゃねーーーっ!!!!!」


これは当分終わりそうもない。
快斗と新一が顔を合わせたらいつものこととは言え、私の部屋と言わずにそこら中駆け回ってじゃれてる2人にため息を吐きながらキッチンで紅茶を入れなおした。

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bkm

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