Clover


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最後の夏


大迷惑


side K
from:早希子
sub :頑張ってるマジシャンさんへ
本文:休憩中でーす(*´∇`*)


夜中の3時半を回った頃。
今日の顔合わせ緊張したなチクショーとか思いながら、有希子さんから貸してもらってる工藤家ロス宅ゲストルームのベットでまどろんでいた。
あと少しで夢のほとりにたどり着ける、なんて時、メール着信を告げるメロディが部屋に響いた。
バーロー、時差考えろなんて思っても何か事件だったら困るから、ほぼ寝てる頭で、携帯を見る。
開くと早希子からで、写メつきメールだった。
あぁ、チクショー可愛いじゃねぇか、なんて。
ちょっと良い夢見れそう、って目を閉じた。
…。
……。
………あれ?
今確か…?
脳内リプレイしてた早希子の写メで、おかしな点があった。
再び眠い目をこじ開けて携帯を見る。
…えぇーっと、さっきの画像、は…、


「な、なんじゃこりゃーっ!!?」


一瞬にして脳が覚醒した。
ピッピッピッとボタンを押す。
コール音すら待てない。


「はい、もしも」
「テメー今どこにいるっ!?」


あっちが出た瞬間に、叫んでいた。


「…ウルセェなぁ。そんな声出さなくても聞こえるっての!」
「話逸らすんじゃねぇっ!テメー今どこにいんだよっ!?」
「は?家だけど?」
「家!?家にいんのかっ!?早希子はっ!!?」


早希子からの写メ。
それは寝転がって笑ってるもの。
それはいい。
問題は寝転がってる場所っ!!
早希子の頭上に写ってる時計やライト、何よりあのクッション!!
あれは俺もよく知ってるっ


「工藤さん?もう帰ったぞ?」
「テメーふざけんじゃねぇよっ!!」


宮の部屋じゃねぇかっ!!


「…お前もしかしてあの写メ見た?」
「しかも写メの存在知ってんのかよっ!!」
「あれは工藤さんがさぁ、」
「ふざけんじゃねぇ!俺が1人で頑張ってるってのに!!」
「いやだからあれは」
「敵か?オメーは敵か?俺の敵だな?」
「だからあ」
「ふざけんなっ!大魔王に気取られてまさかこんな身近に俺の敵がいるなんてっ!!」
「人の話聞けよっ!」
「オメーが俺の話聞けっ!!いいか?たった今オメーとの友情は終わった!!テメー自分のしたこと切腹して詫びろっ!!!」


ピッ、と通話を切る。
くっそ!!
こうしちゃいられねーっ!!!


「有希子さんっ!!」
「あら、快斗くん。やっぱり一緒に飲む?」
「お願いがありますっ!!!」


あの男帰国したらただじゃおかねーっ!!!


side M
「え?快斗、宮本くんに電話したの?」


昨日黒羽からすげぇ勢いの電話がかかってきた。
切腹しろと言われて切れた電話の後、15分おきに嫌がらせワン切り着信が来た。


「私に電話するものだと思ってたのに」
「快斗よっぽどびっくりしたんじゃない?」


ほんと単純だねぇ、なんて言って笑う青子ちゃんと工藤さん。


「…俺すっごい迷惑被ったんだけど」


あのバカのせいですっかり寝不足だ。


「ほんとにごめんね、宮本くん。帰って来たら私からよく言っておくから」


工藤さんは、ほんとに顔が整っていると思う。
さすが女優の娘だ。
そんな子にこんな申し訳なさそうな顔されて謝罪されると何も言えなくなる。
…あのバカ帰国したら覚えてろっ!!


side K
「…ふぅ…」
「快斗くん、お疲れ様!」
「あ、有希子さん。すみません無理言っちゃって…」


当初だいぶ余裕を持って組んでいた日程を、有希子さんに言ってだいぶ早めてもらった。
言い出したのは俺自身だけど、さすがに無理があったかってくらい疲労が隠せない。


「いいのいいの!こっちの知り合いの間でもだいぶ評判良かったわよ!」
「有希子さんのお陰です。ほんとにありがとうございます」
「明日朝イチで帰っちゃうのよね?もっとゆっくりしていけばいいのに!」
「そうしたいのは山々なんですが、どうしても外せない用が出来てしまって…」
「残念だわぁ…。今度は早希子ちゃんと2人で来てね?」
「はい!」


その晩ささやかなお別れ会を開いてくれた有希子さんに別れを告げ、予定よりも10日近く早く日本に帰国することができた。


side M
今日も講習が終わり家に帰ってきて、これから自室で勉強だ、って時。
電気つけてカーテン引こうと窓際に行ったら、


「うわぁ!!?」


頭が斧でカチ割られた人の生首が窓際に置かれていた。
一瞬、心臓飛び出たなってくらいすっげぇビビッたけど、深呼吸して冷静に考えるとこんなことする人間は1人しかいない。


「おい黒羽!いるのはわかってるんだ出て来いっ!!」
「…なーにが出て来いだ、エラソーに!!」


そう言って俺の部屋の天井に張り付いていた黒羽は目の前に下りてきた。


「おっまえなー!普通に俺んち来いよ!なんだその忍者な登場はっ!!」
「忍者じゃねぇだろ!俺はマジシャンだっ!!」
「だいたいなんだあのマネキンはっ!!」
「アレは今の俺の気持ちだっ!!」
「意味わかんねぇこと言ってんじゃねぇよっ!!」
「オメーがふざけたことしてっからだろーがっ!!」
「うわぁ!?………ってぇー…お前今本気で殴ってきただろ!!?」
「俺は気が短いんでね。言い訳は聞かねぇ。死んで後悔しろっ!!」
「はっ!?ちょ、おま、ふざけんなっ!!」


その後はもう散々だった。
黒羽は宣言通り全く俺の話を聞かない。
やられっぱなしも癪に障るしそもそも俺も溜まってる受験のストレスをコイツで発散させてもらったわけだが。
窓ガラスが割れるは、壁に穴開くはで相当な乱闘だったと思う。
運が良いなと思ったのは、2人とも出かけてたから親がこの事態に気づかなかったこと。
運がなかったなと思ったのは、隣の部屋にいた妹が兄の部屋の尋常じゃない物音に驚いて青子ちゃんに助けを求めたことだった…。


「それで?」
「「…」」
「何が原因か青子には聞く権利があると思うんだけど?」


青子ちゃんちは家から徒歩10分。
妹が求めた助けに応じるべく、自転車飛ばして来てくれたわけだけど。
手には竹刀を持っていて、俺の部屋に入って来たと同時に、黒羽もろとも竹刀で殴られた…。


「だいたい快斗いつ戻ってきたの?」
「…」
「そう、また叩いていいのね?」
「今日の夕方ですっ!!」


竹刀を振り上げる青子ちゃんは、黒羽風に言うなら、メデューサさながらに見えた。
いや、目からビームは出してないけど。


「それで?なんで和樹くんの家でつかみ合いの喧嘩してるの?」
「それはコイツが早希子を!!」
「え?早希子ちゃん?」
「だからお前人の話最後まで聞けって!!あれは工藤さんが」
「青子!コイツ早希子を部屋に連れ込んでっ」
「だからそれは工藤さんがっ!」
「もしかして快斗、この間の早希子ちゃんの写メの話してる?」
「…………へ?」


あぁ、ようやく俺の日本語が通じる時がきたと、正直安堵した。

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bkm

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