キミのおこした奇跡ーAnother Blue


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Summer Vacation


動揺広がる前日


2泊3日の合宿?
そんなの一瞬で終わったよね!!


「じゃー俺先に行くけど、オメー諸々気をつけろよ」


サッカー部の合宿も同時に終わった工藤くんが、ハワイに旅立つ前日の夜電話をかけてきた。


「諸々って?」
「戸締まりとか、火の始末とか?」
「火?」
「最近ボヤ騒ぎ増えてるらしーぞ」


どこ情報なのか工藤くんが怖いこと言ってきた。


「気をつけます」
「それからこっち来る時、飛行機乗り遅れんなよ」
「わかってるよ!」


工藤くんは念には念を押して(押しまくって?)通話が終了した。
フゥーとため息が1つ漏れた。
別に悪いことなんて全然してないんだけど、なんだかすごく…あえて言うならやっぱり「罪悪感」て物が胸を占めていて。
モワーッとその罪悪感が完全に占拠する直前、


ピリリリリ


まるで工藤くんとの電話が終わるタイミングを待っていたかのように、黒羽くんからの着信が鳴り響いた。


「は、はいっ!」
「芳賀ちゃん、やっほー」


黒羽くんは今年の全中で準優勝した。
当日のうちに準優勝だったとメールをくれた。
準優勝すごい!!って言ったら、でもやっぱり悔しいって返事がきていた。


「芳賀ちゃん合宿終わった?」
「明後日からもう1回あります…」
「マジで!?帝丹すげーね」


その合宿は合宿でも「勉強合宿」なんです、なんて言えない私は笑って誤魔化すことにした。


「えー、じゃあいきなりだけど明日暇?」
「………明日っ!?」
「芳賀ちゃんに土産あるから、早めに渡しておきたいんだよねー」


予定どう?って聞いてくる黒羽くん。
…待って待って待って待って。
黒羽くんとデデデデ、デート?するってそりゃー最初のメールで言ってたよ?
でもそれってほら、何着ていくのか3日前くらいから悩んで、ニキビとかないように最大の努力でケアして、朝もすごい早くからなんならシャワーにも入って念入りに髪のケアして万全を期して臨むものであってそんなこんなないきなり今日言って明日なんて


「…明日はダメだった?」
「大丈夫です」
「マジ?良かったー!」


今の一瞬でウワーッて頭の中駆けめぐったいろんなことも、ちょっとトーン下げた感じに「ダメだった?」なんて聞かれたらマルッと全て吹き飛んでOKを出すに決まってるじゃん!


「じゃあ俺そっち行くから、何時にする?」
「…『何時にする』!?」


待って待って待って待って待って。
黒羽くん今「そっち行く」って言ったよね!?
それって黒羽くんが米花町に来るってことだよね!?
えっ!?
工藤くんいつ空港行くって言ってたっけ!?
確か10時には家出ないとみたいなこと言ってなかったっけ!?!?


「お、おおおおお昼頃で…?」


別に工藤くんに悪いことなんてしてない。
でも謎にすっごく後ろめたさがあるのは事実で。
私の本能が言っている。
今、工藤くんに黒羽くんのことバレちゃいけない、って!
そう思った私は黒羽くんに疑問形でふんわり時間提示をしたんだけど。


「あ、じゃあ一緒に昼食おうぜー」
「うぇえ!?」


すっかりパニックになった私はこの世の言語とは思えないような言葉を口走ってしまったけど、


「ぶはっ!何、うぇえ、って!」


黒羽くんは爆笑してくれた。
耳元に響く黒羽くんの声に涙ぐみながら、必死に頭を働かせて、明日11時30分に米花駅待ち合わせと決めて通話を終えた。
…あああああ、今日もマイナスイオンが耳元から全身に広がった…!
もう!
もうっ!!
カッコいいんだからァァァ!!!


「ハッ!!」


さっきまでの通話内容に身悶えていた時、フと我に返った。
こんなことしてる場合じゃない!
明日の服を決めて、念入りに身体洗って、なけなしの体力でちょっとストレッチなんかもして、園子から教えてもらった小顔マッサージなんかもしちゃったりして!!
今日の(厳密には今夜の)私はやること盛りだくさんだ。


「…よしっ!」


自分の中で気合を入れて、フン!と鼻息荒くまずは服装選びに取りかかった。

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bkm

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