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『…っくしゅん!』
快「…おいおい風邪かぁ?」
今日は学校も休みで、幼なじみで恋人の快斗の家に来ていた。
少しの悪寒と大きめなくしゃみをしたら、快斗が少し心配そうに私を見てきた。
『…たぶん?』
快「なんで疑問系なんだよ?」
『や、今の季節は花粉症の可能性も無くはないから…』
快「…バーロ、」
そう言って私を自分の方へ引き寄せて、ぺたりと私のおでこを触る。
『…んにゃっ!?』
快「…少し熱いな…。これは風邪だっつうの!」
その言葉と共にペチッとおでこを叩かれる。
『…う゛〜』
快「…ったく、この時期に風邪なんて…。なんか思い当たる節はねぇのか?」
『…そう言えば、』
思い当たる節が無いわけではない。昨日、髪を乾かさないで寝てしまった事、とか?
快「…原因はそれだな」
『ですよねー…』
快「オメーなぁ…」
呆れ顔で私を見てくる快斗。
快「名前は俺が見てやらねぇと体調管理も出来ねぇのか?」
『…そんなわけないじゃない』
もう私も17歳なんですけど。それに髪を乾かさないで寝たのはたまたまで、いつもはちゃんと乾かしてるっつうの!
見るからに膨れっ面の私を見て快斗が笑う。
『…何よ?』
快「いや?可愛いなぁ〜って思ってよ」
『…絶対嘘でしょ』
快「嘘じゃねえって!」
『本当にぃ?』
なら何でそんなに笑ってるのか。可愛いなんて言葉、信じられないんですけど!
『…』
じと〜っと快斗を見る。
快「…ったく、んな目で見んなよな?ただ俺は自己管理が不十分な名前が可愛いって言ってんの!」
『…全然嬉しくないんだけど、ソレ』
それじゃあ私がただの馬鹿みたいじゃない。
快「だから、そんな名前の傍に俺はこの先も居たいって事!」
『…は?』
え、ナニコレ、プロポーズ?
快「そんな名前には…」
ポンッ
と言う音と共に、私の左手の薬指に黒いリボンが結ばれていた。
『…え?』
快「…そのリボン、ほどいてみろよ」
快斗に促されて、シュルリとリボンを外す。
『…キレー…』
リボンの下の薬指には、羽根をモチーフに作られたシルバーリングがはめられていた。
快「…俺らはまだ高校生だし、俺はまだ18歳になってもいねぇけど」
真剣な眼差しのまま快斗が言う。
快「名前とはずっと一緒に居たいんだ。だから…、俺と結婚してくれねぇか?」
快斗の真剣な表情が私を貫く。
『…ズルい』
快「へ?」
私の言葉に真剣な表情をしていた快斗の顔が崩れる。
『…快斗を幸せにするのは私なのに。今、幸せ過ぎて泣きそう…』
快「…バーロ、」
ポンッと私の頭に手を置きながら快斗が言う。
快「俺を幸せに出来んのは名前だけだし、名前を幸せに出来んのも俺だけなんだからよ。」
『…そうだね。私の事、幸せにしてよね?』
快「当たりめぇだろー?名前こそ、俺の事幸せにしろよな」
『もちろん!世界一幸せな男にしてやるっつうの!』
楽しみにしてるわ、って笑う快斗に私は優しく微笑んだ。
今日は黒いリボンが結ばれた、私たちの記念日。
お題:『休憩』より
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bkm