Treasure


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それだけで


1


家に一人でいるのもなんだか寂しくて、私は親友である蘭の家に来ていた。



「で?連絡はしたの?」
「するわけないじゃない」
「名前はこのままでいいの?大事な記念日なのに」
「いや、よくないけど…なんか私ばっかり好きみたいで嫌なんだもん」



今日は新一と付き合って10ヶ月目の記念日。
連絡くれるかなーって淡い期待を抱きながら過ごしてきたけど、結局こず。



「でも、あいつはどっか抜けてるとこあるから言わなきゃ伝わらないよ?」
「うん…」
「あれ?名前姉ちゃん来てたんだ」



蘭と真剣な話をしていたら新一そっくりなコナンくんがリビングへとやってきた。



「コナンくんー」



寂しさを埋めるように私はコナンくんをぎゅうーって抱き締めた。



「ちょ、名前姉ちゃんやめてよ」
「いやよー」
「ねぇーなんかあったの?」
「んー?コナンくんにそっくりな推理バカのことよ」



本当はずっと前から知っていた。
コナンくんの正体が誰なのかを…。
けど、本人は何も言ってこないから私はひたすら知らないフリをして過ごしてきた。



「新一兄ちゃんのこと?(ヤベッ…また俺、なんかしちまったか?)」
「うん…」
「新一兄ちゃんが何かしたの?」



本人は私が正体を知ってるなんて知らないから今も子供のフリをして接してくるのだろう。




「ねぇ、蘭?」
「何?」
「コナンくんちょっと借りていい?」
「いいけど…」
「晩ご飯までには返すから」



蘭に了承をもらって、私はコナンくんの手を握って近くの公園にやってきた。
いい機会だから彼に言おうと決意をした。



「名前姉ちゃん?」
「子供のフリやめたら?」
「へっ?」
「私、知ってるよ?コナンくんの正体…」
「いつ気づいた?」



私が正体を知ってるとコナンくんに言うと、一気に声のトーンが下がった。



「最初から」
「気づいてて黙ってたのかよ」
「うん…」
「バレちまったのはしょうがねー」
「蘭には黙ってるから」
「ああ…わりぃーな」



公園のベンチに座りながら私は小さなコナンくんの手をギュッと握った。



「なんだよ、いきなり」
「今日…何の日か覚えてる?」
「10ヶ月目の記念日だろ」
「覚えてたの?」
「いや、さっき思い出したんだよ…オメーが落ち込んで俺の事、抱き締めるなんて何かあった時しかねーからな」
「さすが名探偵だね」
「バーロ、これは探偵だからわかったんじゃねーよ。名前の事は大切だからすぐわかんだよ」



横にいても分かるくらいコナンくんの顔は真っ赤に染まっていた。
そんな姿を見て、思わず頬にチュッとキスをした。




「へへ…大好き」
「俺も…好きだよ…名前」



小さな体で精一杯、背伸びをして優しいキスをしてくれた。



「背伸びしなきゃできないんだね」
「しゃーねーだろ。」
「いいよ別に、小さくなっても大好きなのは変わらないから」
「ありがとな…名前」




どんな姿になったって、あなたは傍にいてくれる。
ただ…それだけで私は幸せだと思うよ?



fin...



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