Treasure


≫Clap ≫Top

マジック


1


快「名前!」


『あ、快斗くん!どうしたの?』



快「ちょっと名前の様子を見に来ただけ。元気してたか?」


『もう〜私はもう子供じゃないし。第一快斗くんよりも年上なんだけど?』


快「たかが1コだろ?」


『されど1コよ』





江古田高校ミステリー研究会。私はここの部長を務めている。




快「だったらもっとしっかりして欲しいもんだね〜」



この減らず口の後輩は、黒羽快斗くん。別にミステリー研究会のメンバーではないが、たまに顔を出しに来る。


昔、道に迷って泣いていた私を元気付けてくれた彼。偶然にも同じ学校に通っている事が発覚。それ以来、家は離れてはいるが昔から何だかんだで一緒にいた。



『しっかりって…一応部長よ?』


快「部員1人なんだから、部長になるのは当たり前だろ?」


『…』



残念な事に、我がミステリー研究会は部員私のみ。



『で、でも推理くらいなら少し出来るし…。あ、快斗くんのマジックだって頑張ればタネも…』


快「…ったく、何が楽しくて推理なんてすんだぁ?マジックはな、純粋に楽しめばいいんだよ!ほらっ」


『わぁ…』



そう言った快斗くんの手には一輪の薔薇の花が突然現れた。このマジック、好きなんだよね。



快「そうそう。マジシャンにはお客さんの無邪気な笑顔が一番なの!」


『う゛〜…』



惚けてた私のおでこをつつきながら彼は言う。
何でか快斗くんには勝てないのよね…。



『…あ、でも彼ならタネ分かっちゃうかも!』



快「…彼?」


『ほら、高校生探偵の!帝丹高校2年の工藤新一くん!』


快「…あぁ〜」


『彼ってどんな難事件も解決しちゃうし、もう憧れなんだよね!』


快「けっ。なぁ〜にが楽しくて人の粗探しすんのかねぇ?」


『…快斗くんって工藤くん嫌いなの?』



なんだか不機嫌そう。



快「…べっつに〜?そういうオメーはどうなんだ?」


『私?』


快「…工藤新一が好きのか?」




真剣に聞いてくる快斗くん。何だかいつもの快斗くんじゃないみたい…。


『…好き、だけど?』



だって憧れの人だもん。平成のシャーロック・ホームズと言っても過言ではない気がする。



快「…」



好き、と私が発言すると快斗くんが押し黙る。


『…?』




どうしたんだろ?眉間に皺寄せて…。悔しいような、悲しい顔をしてる気がする。



『…快斗くん?』


快「…なぁ、名前」


しばらく沈黙した後、快斗くんが口を開く。



快「サーストンの3原則って知ってっか?」


『は?』




突然何を言い出すんだろ…快斗くんの意図が見えない。



快「3原則、言えるか?」


『えと、確か…。種明かししてはならない、これから起こる現象の説明をしてはならない、同じマジックを繰り返してはならない?』




快「…そう。今からオメーに最高のマジックをやってやるよ」


『最高のマジック?』


快「あぁ。名前、目を閉じてくんねぇか?」


『え?何で…』


快「…1、種明かしをしてはならない」


『…はぁ』


これは従えって事?



私はゆっくりと目を閉じる。



快「…2、これから起こる現象を説明してはならない…」



快斗くんの言葉がそこで切れ、唇に何かが触れた。



『…!?』



びっくりして目を開けると、快斗くんの顔が目の前にあった。




私、快斗くんにキスされてる…?



呆然としながらも、快斗くんの唇を受け止める。



ゆっくりと離れる2人の唇。


快「…名前の事が好きなんだ」



離れた快斗くんの口から告げらた言葉。




快「3、同じマジックを繰り返してはならない。…俺から名前への、名前だけへのマジック。どうだった?」





いつもの快斗くんの笑顔で微笑む。




『…バカ。魅力的すぎて、離れられない』



快「…仕方ねぇな。名前、オメーのそばにずっと居てやるよ」



そう言った快斗くんに強く抱き締められる。




快「あ」


『ん?』


急に大声を出した快斗くん。



『どしたの?』


快「さっきの取り消せよな?」



さっきの…?一体何の話?


快「工藤新一を好きって話!名前は俺だけを見てればいーの!」




格好いいんだか、幼いんだか。


魅力的な彼に出会った時から、マジックにかかっていたのかも。


→感想・感謝

prev next


bkm

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -