Treasure


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月夜の誘い


1


初めての出逢いは本当に偶然で。

あの日、私は夜空を見る為にベランダへと出ていた。
そこに降り立ったのは大きな白い鳥。

私には気づいていないようで、キラキラとした宝石のようなものを月にかざして、その姿はまるで絵画みたいに綺麗で思わず見とれてしまった。

どのくらい時間が経ったのか、私が彼を見ていたことに彼も気付いたみたいで


「そこで何をしていらっしゃるのですか?」
「月を見ていたの。今日は空が澄んでいて月がとても綺麗だったから」
「そうですね。今宵の月はいつにも増して美しい。月が名前嬢を誘っているようですね」

近くで見る彼は、片目はモノクルで隠れてしまっているが、今日の空みたいにとても澄んだ優しい瞳をしていた。


「また会えますか?」
「名前嬢がお望みでしたら、また月夜の綺麗な夜に」


それだけ言うと彼はまた夜空へと飛び出してしまった。
初めての一目惚れがあの有名な怪盗キッドだなんて…。
でも、心を盗まれてしまった私は次に会える日を楽しみに、都会のネオンに負けじと輝く星空に願い事をした。


それがあたしとキッドの出逢い。

あれから私たちは白く輝く月の綺麗な夜の度に一緒にいるようになった。


「こんなに頻繁に出歩いて、警察に捕まったりしない…よね?」
「そんな不安そうな顔をなさらないで下さい。私は絶対に捕まりません。そんなことになってしまったら名前嬢に会えなくなりますからね」


キッドが私に甘く囁く度に、私の心は高く強く鼓動する。
貴方という愛しい存在に、私は依存してしまって、逢えない日が続くと寂しさで狂いそうになってしまう。

月夜に誘われて出会った私たち。

普通の恋人同士とは行かないけれど、それでも一緒にいれる時間が幸せだった。

彼の正体になんて興味がない。
彼が秘密にしたいと思うならそれでいい。

ただ、月夜の会瀬を重ねるだけで、私はこんなに幸せなのだから。




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bkm

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