キミのおこした奇跡


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浪花の連続殺人事件


解決。そして、


「なんでこの人、左手に手錠2つもしてるの?」


泣き止んだ私から離れてコナンくんが大滝さんに聞いた。
…思わず抱きしめちゃったけど、コナンくん、ほんとに小さかった。
私の腕でもすっぽり包み込めるコナンくん。
工藤くんは、あんなに大きくてがっしりしてたのに…って、べ、別に工藤くんにぎゅってされた時を思い出したわけじゃなくっ!
ぎゃあっ!
自分から思い出しにいってしまっ…!!


「どないしたん?」
「なんでもありませんっ!」


わ、忘れよう。
あれはお芝居だったんだから。
あれはお芝居、あれはお芝居、あれは


「なになに?アタシにまだ喋ってへん工藤くんのこと何か思い出したん?」
「ち、ちちちち違っ」
「なになに?教えてーな!」
「べ、べべべ別になにもっ」
「さっきみたいに工藤くんが守ってくれたことあるん?」
「違うよ!工藤くんはそんなこと」
「ほな工藤くんに抱きついたことでもあるん?」
「べ、べべべべ別に私が抱きついたわけじゃなくあれはお芝居で工藤くんがっ」
「…芝居で抱きつかれたことあんねんな?」


ニタァと和葉ちゃんが笑う。
園子だ!
大阪の園子がここにっ…!!


「なーんや、やっぱり工藤くんもあおいちゃんのこと」


和葉ちゃんがそう言いかけた時だった。


「オジサン!平次兄ちゃんが危ない!!」
「へ?」
「平次がどないしたん!?」
「警部さんっ!その人に手錠をかけて閉じ込めた犯人を聞いて!!もしかしたらその犯人はっ…!!」
「手錠をかけた犯人?…誰や?沼淵?」
「誰がオメーらなんかに」


ドガッ!
大滝さんがパトカーのドアを叩いて少し凹ませた。


「…誰や、言うとんのや」
「さ、坂田やっ!!あんたらの仲間の刑事の坂田やっ!!」


そ、そうだっ!
服部くん、確か犯人が持ってた銃で怪我を…!


「警部さん!今平次兄ちゃんが坂田さんと一緒に郷司議員のところにっ」
「そこやったら他の刑事もいてる!このままそっち向かうぞ!」
「か、和葉ちゃん!私たちも乗せてもらおうっ!」
「…うんっ!」


自分のことでいっぱいいっぱいで服部くんのことすっかり忘れてた!
コナンくんも、血が出るような怪我をした。
なら、服部くんももっと悪いことになってるかもしれない…!


「なんや、どないした!?…銃声やと!!?」
「警部さん!もっとスピード出してっ!!!」
「わかっとるわ!!坊、しっかり捕まっとけよっ!!!」


大滝さんの声を合図にパトカーのスピードが増す。


「…平次っ!」


私の隣で祈るように呟いた和葉ちゃんの手を握ることしか出来なかった。
パトカーが郷司議員の家に着いた時、離れの蔵の消火作業が行われていた。


「服部ーーー!」
「平次ーーーっ!」


コナンくんと和葉ちゃんが一気に現場に駆けて行く。
私も後に続くとちょうど服部くんが救急車で運ばれる寸前で。
周りにいた刑事が、服部くんはお腹に銃弾を受けていながらも燃え盛る炎の中から犯人抱えて逃げてきたって言っていた。


「オッチャン!!アタシらも乗せてっ!!!」
「わ、私も乗るっ!」

和葉ちゃんについて私と、それからコナンくんも救急車に乗り込んだ。


「平次!しっかりしぃや!!平次っ!!」
「服部くんの傷の具合はどうなんですか?」
「まだわかりません。とにかく早ぉ弾を取りださへんと…」


弾が中に…。
服部くんの息遣いが荒い。
いつも以上に何もできない自分がもどかしかった。


「撃たれたんとちゃうわ…。自殺しようとしたんを止めて、たまたま当たってもうたんじゃい…」
「なんで!?なんでそんな危ない真似すんの!?」
「どっかのアホが言うてたんや…。推理で犯人追いつめて死なしたらあかんてな…」


服部くんがチラッと工藤くんを見た気がした。
そうだ…。
工藤くんは1度犯人を死なせてしまって、それからはずっとその時のこと、後悔していたんだった…。


「あ、あかん…、なんや、ねむとなってきた…ちょっと、寝かしてくれや…」
「あかん!寝たらあかんよ!?平次っ!!…平次?」
「服部っ…!」


服部くん…!
やっぱり原作よりも悪いことがっ…!


「いややっ!平次ーーーーっ!!!」
「………やかましーっ!」


え、


「寝かせ言うとんのがわからんのかどアホーーっ!!!あいたたたたっ…!」
「こんだけ元気があるんやったら大丈夫やと思います」


あ、あれ?
原作と、変わって、いない…?


「俺昨夜から大阪見物のえぇコース考えとってあんまり寝てへんのや!そやさかい耳元で気色悪い声出すなよ、ボケェ!」
「………悪かったなぁ?気色悪い声で!」
「ぐああああああっ!!!何さらすんじゃアホんだらーーっ!!!」
「アホはそっちやろ!!ややこしい寝方する方が悪いっ!!!」
「俺は怪我人やぞっ!!?」


原作と、何も変わっていない。
なんで?どうして?
それは私にはわからない。
でもとりあえず、


「元気そうで良かったね」
「…うん、そうだね」


コナンくんに続いて、服部くんまで怪我がひどくなってしまっていたら、私は本当に、ここに来たこと後悔したと思う。
私が「ここの世界」に来なかったら、って。
思ったと思う。


「コナンくんもちゃんと手当てしてもらうんだよ?」
「え?」
「そこ!」
「大丈夫だよ、ちょっと血が」
「ダメッ!きちんと手当てしてもらうのっ!わかった!?」
「…はぁい」
「それと、私がいるときはもう2度とコナンくんを事件捜査に行かせたりしないからね!!」
「…えっ!?」


もう2度と、こんなこと、…こんな怪我、させない。


「やっぱりいっくら頭が良いからって小学生に事件捜査は早いし危ないのっ!…今回はコナンくんも服部くんも元気そうだけど、次も大丈夫とは限らないんだから!私が一緒の時はもう事件捜査に行っちゃダメ!わかった!?…………何ため息ついてるの?」
「んーん!…僕なんか疲れちゃった!」


私から視線を逸らして盛大にコナンくんがため息を吐いた。
…コニャンのくせにっ!
なんか生意気っ!


「ほんならこのまま運んで弾取り出す手術しますんで、」
「いっそそのアホな脳みそも取り出してもらい!」
「なんやとコラァ!」
「担架から動かへんでください!!連れてきますよ!?」


手術室に運ばれた服部くんを見送ると、和葉ちゃんは終わるまでここで待つと言っていた。
…私ももし工藤くんがそうなったら同じことしたと思うから、それを止めなかった。
一緒に残るって言ったら、コナンくんもいるから先に帰ってって。
明日駅まで見送りに行くって約束してくれた。
確かにコナンくんも怪我したし、お言葉に甘えて、ホテルまで歩いて帰ることにした。
道中おんぶするって言ったのに、コナンくんに真顔で拒否された。
…コナンくんくらいの重さならおんぶできるのに!
そう思いながらオジサンの待つホテルに向かう。
どちらからともなく、繋いだ手は、今までと逆で。
いつも、私の手を引いて歩いてた工藤くんを、今は私が手を引いて歩く。
いつも、私の手をすっぽり包み込んでいた大きな手は、今は私が包み込めるくらいの大きさになっていた。


「1つ、聞いていい?」
「え?」


振り返ると小さなコナンくんが、私を見上げていた。

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bkm

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