キミのおこした奇跡


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卒業。そして、


謝恩会のはじまり


「謝恩会?」
「そーよ!今年はシンデレラ!!」


あっ!と言う間に時は流れてもうすぐ卒業って時。
あの後黒羽くんとは関東大会で会って(結局今回も予選敗退…)ちょっとお話して、メールで近況報告を1週間に1回くらいするような仲で落ち着いていた。
うん。
デートできなかったことはちょっと残念に思うけど、でも『デート』って思うときっとわけわからなくなるしこれで良かったんだと思う。
そんな日常が過ぎ、仕切り屋マシンガン園子様曰く、今年の卒業式後にある謝恩会でシンデレラをするそうな。
参加者は希望制だって。
好きだよね〜、園子そういうの。


「頑張ってね」
「あんたも参加すんのよっ!!」
「え、やだ、めんど」
「ダメよ!ダメダメ!あんたはシンデレラに抜擢されたんだから!」
「…はあ!?なんで!?なんで私!?もっと適任がいるよ!蘭とか!」
「ダメよ!あんたしかいないの!!」
「ごめんね、あおい。小道具のガラスの靴、サイズがぴったり合う人あおいとD組の佐々木さんだけなのよ」
「…いくつ?」
「21.5センチ!」


そりゃ私と同じくらい小柄な佐々木さんくらいしかはいらないだろう、そのサイズは…。


「あおいと佐々木さんで灰かぶりの時と舞踏会の時を演じ分けてほしいんだけど」
「私ベル薔薇みたいな衣装は嫌!あんなの着るくらいなら灰かぶりでいい!!」
「…普通ドレスの方選ばない?」
「やだ、あんなので人前出たら恥さらしもいいとこだもん!」


それこそ前に工藤くんに言われたみたいに「馬にも衣装」って指差されて笑われるのがオチだし!
それだったら初めっから灰かぶりの方がいい!


「ま、まぁドレス着ないでいいなら出てくれるみたいだし、良かったんじゃない?ね?園子」


そんな感じにバタバタっと謝恩会シンデレラの製作が決まり、いろいろと稽古が行われた。


「…工藤くんが王子様なの?」
「俺だってやりたかなかったんだよ!」


の、わりにすっごい生き生きと稽古してるのは気のせいなんだろうか?


「あの男顔はいいから、女子の人気投票ダントツ1位で王子役になったのよ!」
「へー」
「新一くんが王子役になったからには、思う存分演出させてもらうわよ!」
「…園子その顔怖い」
「うるさいわね!今に見てなさいよ!?」


よくわからない雄叫びをあげ、園子は去っていった。
工藤くんが王子様でも、シンデレラは確か灰かぶりの時に王子様とは会わないはず。
実際に一緒に演技する場面がないならいいや。
だって工藤くんと、シンデレラと王子って、ちょっとなんか、ベル薔薇衣装より恥ずかしい、…気がする。


「ああ、王子様。もう時間が来てしまいます」
「待ってください!せめてあなたのお名前をっ!!」


園子のスパルタ指導の下、あっという間に卒業式当日。
フツー卒業式ってもっと感慨深くなぁい?
って思ったけど、そこはみんな仲良く高等部に進学するエスカレーター学校、帝丹。
卒業式よりもその後ある謝恩会でみんな頭がいっぱいだった。
観客席には卒業生、先生はもちろん父兄(有希子さんも優作さんも来てる)もいて、ちょっとした大舞台だ。
第1部の出番が終わり、後はシンデレラの魔法が解けてみすぼらしい格好になったらまた私の出番。
…てゆうか工藤くん王子役サマになってるな。
黙ってれば猫王子…!
いや「台詞だけ」喋ってたら王子…!
地が出たらあっという間に農民の子っ…!!
さすが女優の息子。
あ、私の出番だ!


「ああっ!小さすぎて私の足に合わないわっ!!」
「じゃあお前は!?」
「わ、私も、きつくて無理…」
「この家に他に娘はいないのか?」


そう言ってみんなが一斉に私を振り向く。
ベターな演出だけど、演出家園子様曰く「小鹿のように怯えながら履け」って言われた。
ほんといつも思うけど、これでお嬢様なら私はお姫様じゃない?
ってつくづく思う。


「ま、まさかっ!」
「シンデレラがピッタリだなんてっ!!」


みんな役に成りきってるなぁ、なんてちょっと冷めた感じでいた。


「その娘か?かの姫が置き忘れた靴を履けた者は」


………は?
声のした方を向くと工藤くんが王子姿で颯爽と登場してきた。
…あ、あれ?
ここで工藤くん出るって台本にあったっけ?
さっきの舞踏会のシーンでもだけど、(にゃんこファンと思われる女子の)黄色い悲鳴が館内に響いていた。
…うん?
舞台袖で蘭が何かカンペを


ごめん、あおい!園子の指令で台本変更!!アドリブで新一に合わせて!!


………はあ!?
だ、台本変更って何!?
アドリブってどういうこと!?


「娘。…私に顔を見せてくれないか?」


台本にはなかった工藤王子の言葉に、驚きながらもゆっくりと顔をあげた。

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bkm

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