キミのおこした奇跡


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キミ情報初入手


目くそ鼻くそを笑う


「ほら、ここだぜ」


T字路を左に曲がったところで見えた巨大な建物。
門には「私立帝丹中学校」とある。
その文字になんだか感動してしまった。


「とりあえず職員室に行くんだろ?蘭、後頼むわ」
「わかった」
「え?ちょっ、工藤くん!」


自分の世界に入っていた私を尻目に言うだけ言うと工藤くんはスタスタ歩いて行ってしまった。
なぜ中途半端にここで放置?


「じゃあ芳賀さん、職員室まで一緒に行こう?」
「え?あ、うん?」


目の前をさくさく歩く毛利さんについて校内に入る。
…いやいや、あなた使われてますよ、あのにゃんこに!


「ごめんね、新一が」
「え?」
「新一、学校じゃ私ともあんまり話さないんだよね…」
「え!?そうなの!?」
「うん。私と話してると他の女の子が来るかもしれないからって、学校だと男の子たちとしかいないから」


そんなに苦手なんだ、女の子…。
本当に意外だ。


「でも昨日そんな感じなかったよ?」
「え?」
「私来たばっかりで道わからなくて工藤くんに声かけたら、マンション前まで送ってくれたよ?」
「え!?新一が!?」
「うん」
「…意外」


いやいや、私の方が意外なんだけど。


「いろいろお世話になりました」


職員室前まで無事送ってくれた毛利さんに頭を下げる。
この子からしてみたら、ほぼとばっちりだったけど。


「じゃあ、行くね」
「…芳賀さん」


職員室に向き直る私を毛利さんが呼び止めた。


「同じクラスになれるといいね」


ふんわり、と。
柔らかい微笑みを残し毛利さんは去っていった。
ああ、この笑顔なら工藤くんもたまんない…!
そんな毛利さんの背を見送ってから職員室のドアを叩いた。


「芳賀あおいです。来たばかりなのでわからないことだらけですが今日からよろしくお願いします」


教室を見渡す。
そんな気はしていたけど、にゃんこや毛利さんとは別のクラスになったようだった。
…まぁ人生こんなものだ。


「私ちょっとトイレに行くね」


転校初日の転校生の宿命。
ありがちなクラスメートの質問攻めに当たり障りなく答え、ようやく昼休み。
ああ、やっと解放さる。
冷蔵庫空だったからほんっとお腹空いたし!
なんて思いながら席を立った時だった。


「芳賀いるか?」


その一言に、教室中がざわついた気がした。


「工藤くんどうしたの?」
「…オメーちょっとついて来い」


そう言うが早いか、にゃんこに手を引かれ無理矢理歩かされる。


「私のお昼は?」
「すぐ済む」


そう言ってついた先は保健室だった。


「…何ここ?」
「保健室。…失礼します。ええっと、ほら、こっち!」


ぐいぐい引っ張られた先にあったものに目を疑った。


「…何これ?」
「測定器。あれから考えたけど、やっぱりオメーに150あるのは納得いかねぇ」
「…はあ?」
「俺の目測だとオメーは147くらい?」
「いやいや、私152だって!」
「だから計ってみろって言ってんだろ!靴下は許してやっから早く乗れ」


にゃんこは私の想像以上に身長を気にするらしい。
私だってやっと152になったんだ!
縮んでたまるか!


「いだぁ!?」
「あ、悪ぃ」


ピッタリとつける測定板を、思いっきり頭に落としてきたにゃんこ。
…新手のいじめ?


「動くなよ?ええっ、と…148!ほらやっぱり150ねぇじゃねぇかよ!」
「うそっ!!150ないわけがない!!」
「ねぇんだよっ!サバ読んでんじゃねぇよっ!!」


自分の胸を触った時からうっすらそんな気はしてたけど、体がビミョーに若返り小さくなったらしい…。
私が150超えるのにどんだけ牛乳飲んだと思ってるんだ…。
またあの苦労を?


「148か…。目測で1センチのズレならまぁ許容範囲だな」


右手を顎に添えてぶつぶつ言うにゃんこ。


「工藤くん」
「あん?」
「人に無理矢理身長計らせたからには、自分も計るんだよね?」
「なんだって俺が」
「怖いの?工藤くんも縮んでるかもしれないしねぇ」
「縮むわけねぇだろっ!!」
「ちなみに今の身長は?」
「…」
「工藤くん」
「ひ、155はある」
「じゃあ乗って」


だいぶ躊躇っていたけど、にゃんこは意を決したように測定器に乗った。


「いってぇ!!」
「あ、ごめん」


もちろんわざとだけど。


「ええっ、と…。…いくつって言ったっけ?」
「155はある」
「…確かにあるはあるけどさ」
「…いくつだよ?」
「…155.2センチ」
「だろ!?だから155あるって言ったじゃねーかっ!!」


物凄く、勝ち誇ったように笑うにゃんこを見て、この子ほんとは「推理バカ」じゃなくただのバカなんじゃないかと思った。
お昼お預けくらってまでやることじゃないよね…。
目くそ鼻くそを笑うって言葉が過る。
工藤新一に身長ネタを振ってはいけない。
私がここに来て初めて教訓にした言葉。

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bkm

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