※若泉×中谷
若泉:中学生なのに若いというスカウトキャラ
中谷:人間不信っ子。人脈No.1





 自然とクラス中の話題や噂話が集まっていく、そんな人間が少なからず居ると思う。少なからずなんて曖昧な表現を使う事が間違っているのに気付く。どこにでもどんな場所にでも、話を吸収する如く脳におさめる人間は必ず居るのだ。そうでなくてはおかしい。14年の自分の経験上。
 中谷は向かいの席で今日仕入れた情報を卸す若泉を横目で見る。彼の周りには話がよく集まっていくと思う。若泉自身も噂話が好きだから余計にだろう。どこどこの○○くんが○○ちゃんと付き合っている、定番のネタからどこどこの猫は化け猫だとか信憑性のない噂まで知っている。しかも中谷が以前住んでいた奈良のコアな噂まで話すから、少々気味が悪いとさえ感じた。
 しかし若泉は人の評価を下げるような話題は口にしなかった。確かに誰々は愛想がないとか、個人的な愚痴を言う位はあるが、学校に広がる他人の悪い噂というのは言わない。普通噂好きといったら、人の不幸話が好きな人間と考えていた中谷は不思議に思った。
 若泉は若い奴らは噂や流行りのものをいち早く察知すべきだと言った。まあそうかもしれない。若い人――思春期というのは特に多感になり、人の心象を気にする時期だと思う。実際、中谷もそうだ。だが中谷は自分より他人を気にした。自身が人に騙されやすいのは知っているから、相手は信じるに値するか見極めるのに神経質になる。それを若泉に話した際には、馬鹿だなと一蹴されたが。
 結局は噂は噂だ。他人の言葉は信じても意味がない。最終的には自分が答えを出さなくてはいけない。そう語った若泉の目は何か言い表せない光があった。
 そういえばさあ。
 彼の声で中谷は我に返った。頬杖をつきにやつく若泉の話に集中する。

「俺とお前、ただならぬ関係なんじゃないかって」
「な、何言ってんだよ!」
「ただならぬ関係だって、きゃー」
「きゃーじゃない気持ち悪い!」
「気持ち悪いなんて酷い、真之ちゃん」

 思わず悪寒がした。
 彼の頭を机と仲良くさせた後、立ち上がって教室から出ていく。皆の視線が痛かった。後ろから情けない彼の声が追ってくる。
 これも噂になってしまうのだろうか。中谷は相手はちゃんと考えるべきだな、と思いながら若泉のタックルを受け入れた。






う:噂話が好きな君




2010.02.06









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