※子南雲+子厚石



「旅行、行けないから」

 ベッドの中で白い奴は言う。腕へ伸びるチューブに取り付けられた細長い入れ物にてん、てん、と水が落ちてる。
 俺はボールを抱えながら、ベッドに乗った。
 茂人が持ってるいっぱいの絵葉書。海だったり、建物だったり、畑だったり。

「ほらこれ、フランスのエッフェル塔」
「エッフェルって何」
「さあよく分かんない」
「だよな」

 今日もどっさり、絵葉書を貰った。今日はロシアのだって。

「ロシアって何処だ」
「うーん、寒いトコ?」
「雪ばっかだな」
「じゃあ北極の近く?」
「一年中雪だな!」
「うわ、さむそー」

 お姉さんが、ご飯の時間だからって俺を追い出そうとする。
 茂人は葉書の山を宝箱に入れて、俺に手を振った。ここのとこ、ずっとベッドだ。
 今日は、いつか体が良くなったら一緒に世界一周しような、と約束をした。






ふ:風景画が好きな君




2010.09.12









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