※南雲×涼野
により、未来
ガムテープを剥がす作業に飽きて、風介は時計を見た。一番最初に、この部屋に設置した白く丸いそれは、昼過ぎをさしている。思わず眉を寄せた。
「おい」
「何ー」
奥の部屋から晴矢の声がする。昼飯どうする、と聞けば冷蔵庫に冷凍食品がある、と返ってきた。
「最近冷凍ばっかだ」
呟いただけなので、晴矢には聞こえないはずだ。
荷解きで忙しかったのは、二人同じなのだが。
「晴矢の料理が食べたい」
冷凍庫からピラフを取り出して皿に盛って電子レンジで温める。干からびたように平らになったそれをスプーンで突いて、口に含む。
奥の部屋が片付いたのか、晴矢がビリビリのガムテープを手にやってきた。ゴミ袋にテープを捨てて、一息つく。それを横目に見ながら、風介はピラフを平らげていく。
「これ終わったら、花見行こうぜ花見」
「めんどくさい」
「えーいいじゃん春だし」
「理由になってない」
「折角の同棲生活だぜ。始めが肝心だぜ、始めが」
そういう事なら。
相変わらず、晴矢の言う事には甘い涼野風介18歳春、であった。
は:春が好きな君
2010.09.12
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