※風丸+立向居+綱海
「俺、あれが見てみたいんですよ」
「あれって、何だ」
「あの、東京タワー」
こーんなに大きいんでしょう? と立向居は手を広げた。綱海と風丸は笑って頷いてやる。
「富士山の方が大きいけどな」
「それでも、東京に来たら東京タワー見たいです」
「そうだよなあ。東京タワーかあ、一度行ってみたいなあ」
立向居と綱海が目を輝かせるものだから、風丸はちょっとたじろいだ。何だその捨て犬のような瞳は。何で俺に視線を向けてくる。
「なあ、風丸。俺東京の土地勘ないから、案内してほしいぜ」
「ええー」
「お願いします、東京に来たからにはゆっくり観光してみたいんです!」
「あのさ、東京って言っても、あんまり……あれだぞ? 人も多いし、観光する場所も……」
「東京タワーだけでも!」
「そうだそうだ!」
「二人だけで行ったら、きっと道に迷って無事に帰れなくなっちゃいます!」
「東京ってすごいんだろ? 俺東京怖い」
そんなご冗談を。
あまりにも二人がしつこいものだから、風丸はとうとう了承してしまった。自分が居ない間に、雷門サッカー部は賑やかになったものだとしみじみ思う。
こうして、三人は日曜日、東京の街に繰り出す事となった。この観光の目的が、風丸ともっと仲良くなりたいと願う二人の思いが詰まっている事を、彼はまだ知らない。
と:東京タワーが好きな君
2010.09.08
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