ヒロトとウルビダが帰ってきてから、何やら二人は仲良くやっている。 珍しい事もあるものだ。 晴矢はリビングソファを占領して、アイキューに借りた謎解きゲームをやっていた。 どうも捻くれた問題が多い。 寝返りを繰り返して答えを考えるが、難易度が高い。 ちなみにアイキューはこれを軽い運動と言って、瞬時に解いていたりする。 それはリピートしているからではないか、アイキュー……。 IQ1000と噂される彼より遥かに知識も頭脳も足りないが、あと少しで解けそうだ。 でもヒントが足りない。あきらめようか。 この不快さと言ったら。 ジレンマに悩まされながら、ごろごろしていると腹を蹴飛ばされた。 相手は分かっているし、軽いじゃれ合いなので簡単な挨拶を返してやると邪魔だと辛辣に言い放たれた。 「いいじゃん。皆部屋に行ってるんだし」 「お前が気を使わせているんだ、馬鹿」 ソファから少し離れた机はヒロトとウルビダが大量のチラシと共に占領している。 リビングを見回せば、ここには自分達と彼らしかいない。 晴矢の前が陣取られ、テレビの電源がつけられた。 テレビ下のラックから伸びるコードがコンセントに繋がれ、コントローラーを握った風介を苦々しい気持ちで見つめる。 「またあの気味悪いゲーム?」 「見たくなければあっちに行け」 テレビ画面に映し出されたタイトルが怪しく光る。 慣れた手つきで操作され、メモリーカードを読み込む音が響き始めた。 「お前趣味悪い」 「どうも」 「もう少し平和的なゲームやろうぜ」 「例えば」 「んーRPGとか」 「飽きるから無理」 風介が画面に集中し始める。 おどろおどろしい女の声がBGMの暗いフィールドを走り進める少年の手には火かき棒が持たされている。 平和的なゲームではないよな、これは。 晴矢にとってはホラーより謎解きの方が楽しい。 叩き割りたくなる衝動が定期的に襲うが。 まだ問題が解けない。 正直にアイキューに聞いてこようか。 ここまでイラつく問題は初めてだ。 赤いタッチペンで画面を叩いていると、腰の辺りに衝撃が走る。 後頭部で頭突きをされたようだ。 風介がうるさいと抗議をした。 「そっちの音の方がうるさいわ」 「仕方ないだろう」 「音小さくしろよ。BGM怖いし、叫ぶ時の声とか気味悪いわ」 「意外と怖がりなのか。そうかそうか、いい事聞いた」 「ちげーし」 足で頭を軽く蹴ってやれば、力の入った拳が返ってきた。 こうなると喧嘩であるが、それは過去の話だ。 晴矢は大人になった。大人の対応として無視を決め込んでやる。 「あのさー少し考えようぜ。人に迷惑かけたら……」 「お前もな。ソファを占領されたと、ヒートが困っていたぞ」 「いーの」 「良くない。わたしが座れないじゃないか」 テレビから野太い男の雄叫びが上がる。 驚いて画面を見ると、少年が火かき棒で人間ではなくなった男を殴っている所だった。 ああ、怖い怖い。 最近の子供はこういう暴力的なゲームでストレスを解消しているのか、と頭を抱えたくなった。 一応晴矢も立派な子供であるのだが、こういうゲームは少しいただけない。 「お前、クリスマス何頼むんだ」 風介がゲームを見たまま言った。 最初独り言かと思ったが、そうではない事に気づいて唸る。 「別に決めてないな。お前は」 「特に」 「あっそ」 クリスマスか、と晴矢は考えた。 今週に25日があるという実感がなかった。 ゲームの蓋を閉じ、休止モードにさせる。 「止めるのか」 「頭痛くなった」 足をぶらぶらさせると、うっとおしいと叩かれた。 今度はコントローラーの出っ張った部分での攻撃。 ダメージは皆無なので、お返しはしない。 つまらなそうに風介が唇を尖らす。 「クリスマスプレゼント何が良いかって瞳子姉さんから電話が来た」 「へえ」 「急がしくて、25日は来れないらしい」 「大変そうだな」 「学校には慣れたか、聞いてきたぞ」 「うん、慣れた慣れた」 「26日には来れるから、プレゼントを持っていくって」 「んー」 うつ伏せになって、腕に顔を埋める。 少し目が疲れた。 もう一度聞くが、と問われる。 「プレゼント、何頼むんだ」 「……じゃあブリザード欲しい」 そう呟くと、初めて風介がこちらを向いた。 少し怒ったような表情だった。 「お前、もう持ってるだろう」 「んーファイアの方な」 「同じ内容のゲーム買ってどうする」 それは、と晴矢は風介の頬をつついてやる。 「お前と通信したいから」 かっと、相手の頬が赤くなった。 「可愛い」 率直な感想を述べてやると、頭を思い切り殴られた。 「それはCMの台詞だろう!」 「あれ、知ってた?」 風介がテレビに視線を戻すと、悲痛な叫びが上がった。 ホラー女優もびっくりという悲鳴に、ヒロトが驚いてこちらを見る。 「終了条件未達成、だって」 「やっとここまで来たのに、馬鹿晴矢!」 CMのCM! クリスマス準備号2。 ゲームする二人を考えると可愛い。某所でホラーゲームが好きなガゼルとか見てると滾る。 実際のイナイレ2のCMで「父さんと通信対戦したい」というのを赤い子にやらせてみました。 今回ので二人がやっていたゲームは、晴→レイトン教授、風→SIRENという具合。 2009.12.23 初出 ←back |