The room 昔から何処かぶっ飛んでいたアフロディは連絡一つ寄こさず、急に韓国へと舞い戻ってきた。そして両脇には、彼が日本から連れてきた、生意気そうな赤と青い二人組。かつての敵で、腕は確かに良い筈だからとスカウトしたのだと言うのです。突然増えたチームメイトに皆困惑しているようでした。かく言う私、チェ・チャンスウも。 彼らは何かと二人で行動する事が多かった。外国に放り込まれ、周りは全て外国人で、とあれば、同じ国の者と固まるのが普通かもしれません。日本人は集団行動を好む傾向を持つ。だがしかし、彼らは妙に親しかった。アフロディに聞くと、彼らは同じ孤児院出身で幼い頃からずっと一緒に暮らしていたらしい。なるほど、確かにそれで納得がいく。しかし、それ以上に彼らの距離は近すぎる。男女が睦み合う姿のように。皆もそれに疑問を覚えていたらしいと、最近分かりました。 そして、ある夜の事です。 ファイアードラゴンの宿舎は、二人一部屋の体制を取っている。私はアフロディと、東側の一番端の部屋を使っていました。何故過去形なのか、それはこれから語らせていただきます。 私が入浴を終え、入れ替わりにアフロディがバスルームへ向かった直後の事である。扉がノックされました。誰かが訪ねてきたのです。練習メニューに対しての提案だろうか、と私は生真面目にそう考えていました。扉を開けると、やつれたジョンスとウンヨンが倒れ込むように部屋へ入ってきました。実際、膝をついて四つん這いとなった二人を、私は慌てて体を起こさせたのです。 「どうしたのです!?」 「キャプテン、俺たち、もう駄目だ」 「あそこには、もう戻りたくない……」 「何を戯けた事を、貴方たちは何の為に此処までやってきたのですか!?」 練習がハードすぎてついていけないのだと、彼らは言っているように聞こえました。 私の叱咤に、彼らはゆっくりと顔を上げました。目の下にくっきりと浮き出た隈が、今でも記憶に残っています。 「あの部屋に、もう戻りたくない」 「部屋?」 「俺たちの部屋だ。あそこには、もう……」 「何故です?」 部屋に戻りたくないとは、どういう事でしょうか。虫でも出ましたか? と聞くと、彼らは大きく頭を横に振りたくりました。 「その方がまだマシだった」 「とにかく、部屋割りを変える事はできないか」 「そう言われましても」 理由を問いただそうとしても、彼らは言葉を濁すだけでした。その日、二人は私たちの部屋で体を休めました。 そしてその次の日、今度ミョンホとソンファンが先の二人と同じように私の所を訪ねてきたのです。 「部屋に居たくない」 「部屋割りを、変えてくれないか」 「貴方たちまで」 「俺たち我慢強い方だけど、もう駄目だ。お願いだから」 涙を浮かべながらの、悲痛な訴えに私は困り果てました。 アフロディに至っては皆で寝るなんて修学旅行のようだと、はしゃいでいたのですが。 「何故そんなに部屋に戻るのを嫌がるのです」 「それは……」 「キャプテンも、あの部屋にいれば分かりますよ」 「はあ」 翌日、私は逃げ込んできた四人の部屋へと赴きました。何も変わった様子は見られません。綺麗に片付けられていて、逆に感心した程です。問題はありませんでした。しかし、その部屋だけは、です。 午後9時を回った頃でしたか、部屋に戻って入浴の準備をしなければと思い立ったその時です。やけに艶のある声が、みみに届きました。何処からか……、それは壁の向こうからだったのです。テレビに備え付けているDVDプレイヤーで、そういう内容のものを見ているのかと思ったのですが、そういうわけではなかったのです。聞こえてくるのは、何処かで聞いたことのある声。アフロディが連れてきた二人組の青い方、涼野風介のものでした。 確か隣は、彼と、南雲晴矢が使っていて、と考えた所である一つの予測が脳に浮かび上がりました。それは常識から外れた事で私は頭を抱えたくなりました。 「あれ言ってなかったっけ、あの二人は付き合っているんだよ」 聞きたくなかった事実でした。 アフロディは髪をタオルで拭きながら、その場に居た私を含め5人にそう告げたのです。 それを知った後、私は監督に掛け合い、部屋割りの変更を申し出たのです。許可が下りたその日の内に、私は南雲晴矢と涼野風介の部屋を、東側の一番端――つまり、私とアフロディの部屋だった所へ宛て、各自の部屋を一部屋ずらす事にしたのです。部屋割りが変更された事に、皆は何となく察したようです。何も言わず私に従ってくれました。 二人は私たちがまだ関係に気付いていないと思っているようです。私たちもそれについてはただ黙認する、というだけです。 壁は薄すぎず、厚すぎず。時折聞こえてくる声に、私は布団を被りながら聞き流しています。 ぼろ様からのリクエストで「韓国メンバー公認の南涼」でした。 南涼なのに、二人が全然出ていない!しかもチャンスウの口調が分からないよ!ですますしてればチャンスウになると思っていましたが、ここまで似ないとは…。 南涼がにゃんにゃんする声がずーっと聞こえてくるとは、天国なのか地獄なのか。韓国メンバーは結構初心な感じがするので少し罪悪感が…。周りをやつれさせる南涼にゃんにゃん恐るべし。タイトルは静岡4な感じで。ホラーですね。 ぼろ様、大変お待たせしました!もう少しで1年経つなんて、わけがわからないよ…。 2011.05.29 初出 ←back |