厭い川の翡翠



 大口を叩いた割には、屈辱的な結果だった。
 俺は目の前で今にも崩れ落ちそうになるガゼルを見る度、笑いがでそうになる。“ダイヤモンドダスト”は“エイリア学園”の恥! 慣れた単語と名前。昔のあいつはもう居ない。
 壁にガゼルを突き飛ばし、腹を膝で蹴る。苦しそうに咳き込む奴は、憎らしそうに俺を見てきた。ぞくぞくと背筋に何かが走る。

「ざまあないな」
「ぅぐっ」
 
 無造作な髪を掴み上げると、痛そうな声。ぞくりぞくり。頭がクリアになるのに変な感じだ。口の中が乾いてくる。

「離せ、下衆」
「口の利き方がなってねえな格下」

 平手で奴の頬を引っ叩く。まだ生意気そうにするから今度は拳で殴った。
 口の端から伝ってきた血を俺に吹っかけて、ガゼルは笑う。鉄臭い血は白い生地に染み付いた。これが終わる頃には、落ちなくなっているだろうか。

「決定。お前お仕置きな」

 髪を掴んだまま、地面に引き倒すと面白いくらい簡単に、ガゼルは床に転がった。まさか、と翠の目が見開く。
 俺は奴のハーフパンツとスパッツを引き摺り下ろして、自分の下着から性器を取り出す。固いままの穴に突っ込むと、ガゼルは食いしばった歯の間から悲鳴を漏らした。
 これだ、これだよ。この気持ち良さ。この悲鳴。

「ぐっう、やめろ、抜け! 抜けよお!」
「やなこった」

 これが初めてってわけでもないしな。
 俺は自分勝手に動いた。鉄臭いのが強くなったと思ったら、結合した所からたらたら血が出てる。もしこれで皮膚にも血の匂いが染み付いたら……、少し愉快だ。

「いやだ、やめろ! いやだいやだあ!」

 征服感が半端ない。
 泣いているガゼルの顔を覗きこむ。綺麗な顔がぐしゃぐしゃだ。俺は塩辛いそれを舐め取って、首に噛み付く。これで食べたら、ガゼルは俺のもの。どうしようもなく、ガゼルが欲しい。食べてしまえたら。でもそれじゃつまんない。
 熱いのに、耳元で水の音が聞こえる。しとしと、俺を満足させるのにそれはすぐに枯渇していく。

「ガゼル」
「死ね、貴様なぞ死んでしまえ!」
 
 潤む瞳は川の中で光る宝石みたいだ。きれーなのに、愛しいのに、とても憎い。いつになったら、その石は川から取り出せるだろう。
 憎悪の対象は歪んだ言葉しか吐かない。
 俺は溢れ出した想いと一緒に、奴の中へぶちまけた。





香乃様からのリクエストで「厭い川の翡翠タイトルでバンガゼ」でした。
暴力的な表現に露骨じゃないけどエロ?うーん、R15あたりですかね…。暴力表現苦手でしたらすみません!
「厭い川の翡翠」ですが、相変わらず濁流に飲み込まれてピチュっています。慣れれば簡単なのでしょうが。「厭う」は「憎い」という意味合いの言葉なので鬼畜っぽいバンガゼ。時系列はDD引き分け後。一番殺伐としている時期だと思います。「糸魚川」と「厭い川」という言葉遊びな感じがとても秀逸ですよね。
香乃様リクエストどうもありがとうございました!今度ともマイナスKを宜しくお願いいたします^^

タイトル「東方風神録」より
2010.09.16 初出 

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