フリリクの幻想入り嫉妬のボツです。理由:これバーンの嫉妬ちゃうで!!
 「ハートフルボッコ:フランちゃん」翌日。
 



 バーンは鈍い。とことん鈍い。どれくらい鈍いかというと、グランに嫌味を言われた上に何か悪戯をされても全く気付かないという位鈍い。いや、グランの事となるとバーンは人一倍敏感だけど。
 バーンの周りには人が集まっていく。わたしたちが育ったお日さま園でも、この幻想郷でも。知らぬ間に交友関係が広がっていったと思うと、気付いたときには彼はわたしの知らない彼へと変わってしまっているのだ。そして遠くなっていく。人と交わるのは良い事だ。視野が広まるのだし、……それを嫉妬するなど、わたしもまだまだ子供なのだと思う。バーンは早々に起き出し、地下図書館の魔女にお茶を出しに行った(ちなみにその魔女にわたしは会った事が無い)。
 紅魔館の仕事は大変らしい。わたしとバーンが館に侵入し、騒いだ事を主のレミリアは気にしなかったようだが、それがあったのは事実だから落とし前くらいはつけろと言って、バーンを紅魔館の雑用係として取り込んだ。彼曰く、わたしは雑用など到底できないというからその役を逃れたのだが、そのせいで定住できる場所が無い。だからふらふらと霊夢と魔理沙、アリスの所をローテーションで宿泊させてもらっている。昨日はレミリアの妹、フランの部屋掃除に駆り出され、そのままバーンの所に泊めてもらった。
 ……少し期待していたんだがな。
 わたしはふかふかと柔らかいベッドに体重をかける。この一週間は固い床に敷き布団だったから、久しぶりの感触だった。羽毛布団の寝心地は最高だし、飯も食わせて貰えるのであれば今からレミリアに仕事をくれるよう頼もうか。その点では、バーンはとてもずるい。鈍い上にずるいのか。最低な男を好きになってしまったな。一人ほくそ笑んでいると、バーンが帰ってきた。シャツに黒いベスト、七分丈のパンツ。あのメイド長に支給された服だ。中々に似合っているから、少し悔しい。

「おはよ」
「バーン。飯はどうすればいいんだ」

 疑問にあった事を問う。メイドたち用の食堂でもあるんだろうか。ここにはベッド脇のチェストしかない。彼はばつが悪そうに顔を歪ませ、頭を掻く。

「わりぃ、今飯持ってきてやるから」
「遅くなる。待つのが面倒だ。食べに行く」
「ダメ! ダメだ! お前はここに居ろ、いいな?」
「何故」
「いいだろ、なんだって。お前は、ここに居ろ」

 何故そんなに慌てるんだ。しかしわざわざ持ってきてくれるというのだから無下にする事はできないな。

「早く持って来いよ」

 頷くと、バーンは出ていった。その瞬間に外からの音が聞こえてきた。不思議だ。今その音を拾った事で、他の音も拾い出す。こんなに騒がしかったのか。
 わたしはとりあえずベッドから下り、クローゼットを物色してみた。この部屋にあるのは、ベッドとチェスと、クローゼット。面白い物が何一つないので仕方ない。クローゼットを開くと木の匂いに、ハンガーが六つ。五本が先程の服と同じデザインのベストにパンツ。あと一本はプロミネンスウェアだ。わたしのユニフォームは、魔理沙の家に置きっ放しだった。取りに行かなくては。
 きゅい、と金具が軋む。バーンが片手にトレーを持って、わたしを見据えた。

「何やってんの」
「何が」
「ユニフォーム。ぐしゃぐしゃにしてんじゃん」

 手に持つユニフォームを見る。掌に力を入れ、胸に抱いているが故にひどい皺を作ってしまっていた。

「これは……」
「寂しかったのか?」

 馬鹿にする様な色は含まれていなかった。むしろ心配する様に伺うので、わたしは思わず首を縦に振って開き直った。

「それが?」
「……そ、っか」

 バーンはトレーを持ったまま、わたしに近づいてくる。釣り気味の瞳は優しげに揺れていて、何処か嬉しく感じた。
 まだ朝だぞ。これから君は仕事じゃないか。
 そんな言葉も言えなくて、わたしは目を閉じた。勿論本心じゃない。建て前だ。本当は構って欲しい。相手をして欲しい。フランと同じだ、わたしは。バーンが鼻を擦りつけてくるのがこそばゆく、笑いを零すと、彼の唇が迫る。
 ああ、朝食が。折角持ってきてくれたのに、勿体無い……。

「ここでやり出さないでね」

 突然の声に、わたしたちは飛び跳ねた。バーンの手から、サンドイッチが落ちていく……。

「おっと。危ないわね」

 刹那、その落ちる寸前だったサンドイッチを元通り、手に持ったメイドが横に現れる。銀髪のメイド長。十六夜……咲夜だったか。その彼女に、バーンは頭を叩かれて撃沈する。

「ガゼル、ここで食べるのは勿体無いわ。日当たりの良い場所の方が良いわよ」
「咲夜さん、ダメだ!」

 ここでもバーンは頑なにわたしを部屋から出そうとしない。メイド長は首を傾げ、当然の反応をする。

「何で?」
「だってさ……」
「ああ、お嬢様? 平気よ。まだお休み中だわ」
「それでもさ……」

 レミリアは吸血鬼だ。朝の間はずっとベッドでぐっすりなのだそうだ。

「そんなに彼が心配ならば、一緒に働いて朝昼晩ずーっと共に居れば良いのに」
「そういうわけには……あーでも」
「どういう事だ」

 話についていけないわたしは咲夜に聞いた。彼女はウインクをして、サンドイッチを差し出す。

「簡単な事。彼、お嬢様や私達に貴方を盗られちゃうのが怖いのよ」
「つまり……」
「嫉妬。彼、貴方と私達が話すのもハラハラものらしいわ」
「咲夜さん!」

 バーンが言葉を遮る。それでも、初めて知ったその事実にわたしは顔が熱くなった。

「バーン……君は」
「うるさい」
「君は馬鹿だね」
「馬鹿じゃねーし」

 バーンは先に部屋から出ると、ダッシュで何処かへ行ってしまった。残されたわたしと咲夜は、顔を見合わせる。

「彼、お嬢様に会わせたくなかったんだわ」
「解せないな」
「お嬢様ね、結構貴方の事も気に入っちゃって、それをずっと気に病んでいたのね。これ以上、貴方の周りに虫が寄り付かない様に」
「……虫? 蝙蝠じゃなくて?」
「うん、まあ例えよ。例え。お嬢様が虫なわけないじゃない」
「そうか」
「でも、バーンは少し頭が弱いわね」

 え、とわたしは咲夜を仰ぎ見る。彼女は呆れた顔で溜め息を吐いた。

「本物の泥棒が近くに居る事。灯台下暗しとはこの事ね」



 朝の日差しは柔らかくわたし達を照らす。風も強くなく、丁度良い。まるで春みたいな陽気だった。

「このサンドイッチ美味しいな」
「私が作ったのよ。ありがとう」
「ハムが美味しい」

 バーンは向かいでわたし達の会話を聞いて、あからさまに苛立てている。わたしにバレたと思ったら、途端に感情を露わにし始めた。肘をついてレタスを突き刺す動作には、少々殺意に似た物が含まれている様だ。

「あら嫌だ怖い顔をしないでよ」
「咲夜さんさ、分かっててやってない?」
「面白い物は大好きだから」

 咲夜はわたしの傍に寄り、バーンへ微笑む。

「でも大丈夫。私はお嬢様一筋なの」
「それでもムカつく」

 しゃきしゃきとレタスが咀嚼される。彼はふんと鼻を鳴らして、明後日の方向を向く。

「おやまあ、何処に行ったのかと思ったらこんな所に居たのか」

 何時の間にやらバルコニーに魔理沙が入り込んでいた。神出鬼没すぎだ。

「おはよう、魔理沙」
「はよー。で、珍しいな。喧嘩か?」
「ちげーよ」
「バーンは私に嫉妬している最中なの」

 ふうん、と魔理沙はわたしの隣に座るとサンドイッチを一つ皿から奪う。そして余計にバーンの顔が歪んでいく。

「まあ嫉妬位普通だよな。でもさ、嫉妬しているだけじゃダメだぜ」
「魔理沙……」
「ほらガゼル、あーん」

 魔理沙も面白がってわたしにサンドイッチを差し出してきた。バーンがわなわなと震える。

「魔理沙、やめろ」
「良いじゃん。まあ固い事言わずにさ」
「あらずるいわ、私も」
「咲夜!」

 口に詰め込まれそうになるサンドイッチを必死に避けて、わたしはバーンに視線を送る。目が据わって少々怖いが、助けを求めずにいられない。




\(^o^)/






中途半端すぎワロタwwどんどん変な方向に行ってしまうから、没になりました。
現在構成しなおし中。

2010.07.30 初出  

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