「用意できたから手伝ってよ!」

レアンとアイシーの二人がリビングに溜まる男子群に言い放つ。
腰に手をやって咎める姿は可愛らしいのだが、幼い頃から一緒にいるためかそうとは感じないらしい男子達は気だるげに返事をするだけだった。
テレビ前のソファに集まった集団は、リモコンを振り回す各々のキャプテンを見つめていた。
珍しいものを今年は沢山見てきたものだと、一年の思い出を振り返り驚愕してしまう。
そして今、最近何かと二人一緒なバーンとガゼルが協力プレイでゲームをしていた。
仲が良いという事実に皆、今日は槍が降るのではないかとはらはらしていたが、ゲームで同時にプレイしているもののコンビネーションはサッカーほど宜しくないみたいだ。
バーンの操作の悪さにガゼルは文句をこぼしながら、彼の代わりに沸いて出るゾンビの群れを撃ち倒していく。
ホラーゲームが苦手なバーンはリモコンの操作に苦戦しながらも敵に応戦した。
だが経験の差があるせいで、画面に現れた途中経過には1PガゼルがA、2PバーンがDとランク付けをされている。
Dランクの文字にガゼルが横目でバーンをうかがい、小さくへたくそ、と呟いた。

「うるさいな! ホラー苦手だって言ってんじゃん!」
「それにしてもこれはひどい」

ガゼルの言葉に電気カーペットに寝転がる観戦者が頷く。
足で近くに居たボンバを軽く蹴って、バーンはリモコンを構えた。

「次はうまくやってやるよ!」
「期待してる」

不敵に笑い合うキャプテン達に、足元のメンバー達はおー、と拍手さえした。

「お蕎麦伸びちゃうだろ! まだ終わらないのか!」

台所を手伝っていたアイキューが声をかけようともお構いなしに、テレビ画面に食い入る。
お腹が空いたと喚いていたバレンもバーラも嘘のように静かだ。
そしてプレイ画面がムービーに変わると、その場の空気が張り詰めた。
英語で話される言葉を聞き流しながら、リモコンを握りなおす。
BGMが一段と大きくなり、天井から影が降りてきた。

「いくぞ!」

奇怪な図体をしたボスの体力ゲージが表示されたと同時にすかさず弾丸を浴びせ出す。
じわじわとボスの体力が減っていく。
観戦者は二人に無言のエールを送り、行く末を見守る。
ダメージを受けながらも、武器を変えたり、アイテムを使ったりとボスへの攻撃を続けると、とうとう体力ゲージが4分の1になった。

「畳み掛けるぞ!」
「おう!」

リモコンを力強く突き出し、ボタンを指で連打する。
自分たちの体力もギリギリだ。
ここで倒さなければ、とガゼルは武器をマシンガンに変えて残っている弾を全て撃ち込んだ。
ボスの動きが鈍くなり、四肢が音を立て胴体が床に崩れ落ちた。
そこで撃破後のムービー。
遅れて割れんばかりの歓声。
バーンとガゼルは手を取って、喜びを露にして抱きついたりもする。
その歓喜のムードの中、どすん、大きな音が後ろからした。

「お蕎麦要らないの?」

サッカーボールを抱えたヒロトが微笑んでいる。
一気に場の雰囲気が変わる。
ヒロトの目は笑っていないし、うっすらと額には青筋を浮かべているし、尋常ではない。

「お腹減ったんだけど、こうしてるって事は皆食べないんだよね?」

ボールがてん、と床を打つ。
そのままヒロトの足に力が加わっていき――

「ごめんなさい!」

わらわら、テレビ前から皆がテーブルへ移動する。
二人も急いでゲームのセーブをし、電源を消し、片づけをし、とテーブルへついた。
席には頬を膨らませたアイシー、レアン、リオーネに、苦笑いをするアイキュー、そしてご立腹であるヒロト、ウルビダが腕を組んで待っていた。

「遅い」

ウルビダの切り裂くような視線に、リビング組みが固まる。
無言の中、力の抜けた溜め息。
ヒロトは手を三度叩き、皆の意識を戻す。

「とにかく食べよう。後でお寿司もあるから。はい!」

条件反射に皆が手を合わせる。
それを確認したヒロトは満足げに笑う。

「いただきます!」

24人の声が一つとなり、リビング中に響いた。
箸を取り、山盛りに盛られた蕎麦へ手が伸ばされる。
にぎやかになり始めた空間で、バーンが隣に座るガゼルを見ると満足げに蕎麦を食べていた。

「うまい?」
「ん」

素直に頷くガゼルに笑いかけてやる。
ガゼルは不思議そうにバーンを見て、そして薬味を差し出した。

「何?」
「ねぎ、好きなんだろ?」

使えよ、と言われて、バーンは箸で沢山のねぎを蕎麦に乗せた。
今度はガゼルが笑って、バーンの耳元に唇を寄せる。

「来年もよろしく」
「あー、うん」

何気ない会話であったのだが、ヒロトの方からアウトー! という叫びが上がった。









レゴリオ暦、大月隠り











クリスマスの続きっぽい。
皆で年越し蕎麦。
ちなみにグラン、ウルビダ他のジェネシス組は隣で静かな年越しをしている筈。
ウルビダは料理の手伝いで来たという感じ。
ゲームはクリスマスに瞳子さんからのプレゼント設定。
協力プレイ可能にこだわったガゼルたん。
結局意味がわからん話になりましたが、つまりは来年もマイナスKをよろしくお願いします!

2009.12.31 初出

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