風邪と入院とお見舞いと
『え!?ヒバリ今日休みなの!?』
「はい。委員長はカゼをこじらせてしまったようなのです」
朝。学校に来ると草壁さんに言われた言葉がそれだった。
『じゃあ仕事は…!』
「そこにある分をやっておくように、と」
『一瞬でも仕事なくなるかもとか思ったあたしがバカだったよチクショー!!』
ええそうですよねわかっていましたとも!仕事がちゃんとあるってことくらい!ヒバリはそれをあたしに押し付けるだろうってことくらい!
てゆーかなんであたしに直接連絡入れないの!?たまたま草壁さんと会ってなかったらその事実を知らなかったあたしが後日ヒバリに咬み殺されるのに!
「それから、仕事が終わったらお見舞いに来るようにだそうです」
『はぁ?お見舞い?そんなの行くワケな──』
「ちなみに来なかったら咬み殺す、だそうです」
『くそっ あたしの行動を先読みされていた!』
なんてこったい!と頭を抱えるあたしに草壁さんははっきりと言った。
「いいですか?絶対にお見舞いに行ってくださいよ」
***
ヒバリがやる予定だった書類も全て終わり教室に戻…ろうとしてやめた。今更来てもなんで?っで思われるだけだろうし、さっさと弱ってるヒバリを見に行こうと思った。
病院に着き、ヒバリの病室まで案内してもらい中に入る。
『ヒバリー?お見舞いに来た…って寝てるや…』
人にお見舞いに来させといて呑気に寝てやがるよコイツ。なんてことは思ってても言わないけど。
…にしてもキレイな寝顔だなー。髪サラサラだしよく見るとまつ毛長いし。普段は最恐委員長様だけど、実際疲れてたりするんだろうな。
「……人の顔ジロジロ見すぎ」
『! 起きてたの!?』
「あんなにジロジロ見られてれば起きるよ」
『マジか…起こしてゴメン』
「別に。そろそろ起きようと思ってたから平気だよ」
ならよかった。あたしの視線のせいで起きたんだったらあたし今頃ここにいないわ。咬み殺されてるわ。
そこであたしは気づく。足元に転がっている人達の存在に。
『ヒバリ、この人達は何?』
「退屈しのぎのゲーム参加者だよ」
『ゲームって?』
「僕が寝てる間に物音を立てたら咬み殺すゲーム」
『参加者っつーかむしろ被害者じゃね!?』
「ちなみに僕は葉が落ちる音でも目が覚めるよ」
『あんたホントに人間!?』
どう考えてもその技は人間がなし得る技じゃないと思うんだけど!
「それで?君は何をしに来たの?」
『アンタが来いっつったんでしょ!?』
「え。………………。…………うん、そうだね」
『何その反応!?』
まさかコイツ忘れてたの!?いやあたしも草壁さんに言われて知ったんだけどさ!言った本人だろテメェ!!
「まあいいや。ちょっと僕のパシ……お使い行ってきて」
『パシリって言おうとしたろ今』
「何のこと?」
『(殺意!!)』
とぼけるヒバリに殺意を覚えたのはここだけの話である。
「ほら、さっさとしてよ。早くしないと咬み殺すよ」
『横暴にも程がある!』
ハイハイわかったよ行けばいいんでしよコンチクショー、とヤケになりながらあたしは病室を出た。
***
『あれ、ツナ?』
「え、風香!?」
買う物はコレね、とメモを渡されたあたしはそれを買いに歩いていた。そこに書いてあったのは、ブラックコーヒーとなにか適当に。……適当にってなんだよ!
なんて葛藤をしているとツナにバッタリ会った。そーいえば今日ツナ来てなかったかも、なんて思う。リボーン曰くディーノと修行がどうとかエンツィオがなんとからしい。
『ツナも入院なの?大変だねぇ』
「(“も”?)あー…うん、まぁ…」
『そっか、ドンマイ。それじゃあたし行くね』
「あ、うん。ありがと」
……そういえばツナが今入っていこうとしてる部屋ってヒバリのじゃ?なんて思ったけど、早く買わないと暴君ヒバリに咬み殺されてしまうので急いで買いに行った。
そして、その間にツナはヒバリによって咬み殺されてしまっているのだが……そんな事実、あたしは知る由もないのだった。
(ヒバリ今戻っ……何があった)
(小動物が僕の眠りを妨げるのが悪いのさ)
(いやそのゲーム理不尽すぎるでしょ)
(そんなことないよ)
(えええええ)
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