日常編 | ナノ

 ついてない

それは、マジメに授業を受けている時のことだった。


〈日比野風香、至急応接室に来て。来なかったら咬み殺す〉


クラスの子と先生からの哀れみの視線がすごく辛い。





―ガラッ


『ヒバリィィ!!なんなのどーいうことなのあれ!!』

「うるさい。応接室には静かに入ってよ」

『あぶなっ!!』


なんなのコイツ!授業中…しかもあと五分で終わるってのに校内放送で呼び出しやがったくせにトンファー投げつけてきやがった!!


『で、何の用?』

「喉渇いた」

『……は?』


だから何って話だよね。でもコイツにはそんな常識通じないワケで。


『買ってこいと?』

「それ以外に何があるの」


早く行ってきなよと財布を渡される。


「早く行かないと咬み殺『わかった!わかったからトンファー構えんな!!』」


わかってるよあたしに拒否権がないことくらい!






応接室を飛び出すと同時に鳴る授業終了のチャイム。
自販機の前でいつも通りのブラックコーヒーのボタンを押す。


『いつも思うけど中学生のくせにブラックコーヒーとかすごいよね。あ、ついでにミルクティーも買っとこ』


あまりに遅くなるとヒバリに咬み殺されてしまうので飲み物を二本もち応接室に向かおうとする。が、



ザッ…



見知らぬ男共に、囲まれてしまった。


『えーっと…どいてくれませんかね』

「悪いがそれはできねぇな」

『何でだよ』


思わずツッコミ入れちゃったじゃねーか。


「アニキィ、ホントにイイんですか?」

「ああ、もちろんだとも」

「やーり!じゃあ俺一番乗り!!」

「あっ ずりぃぞテメェ!!」

「へへっ こーゆーのは早い者勝ちなんだよ!」


誰か説明してください。


『ちょ…これどーいうことですか』

「お前をヤったら、ヒバリの奴どんな反応するんだろーな?」

『顔色を変えないどころか眉一つ動かさないと思うけど』


まあ大体はわかったよ。


『要するにアンタらは女に飢えた獣ってことだ』

「まあ、それでいいさ」


ヤっちまえ。男の口がそう動いた。
だけどあたしはこんなとこでヤられるような女ではない、むしろ殺る方だ。


『……ホント、ついてない』


授業中に呼び出し食らい用は飲み物買ってこい。飲み物買って戻ろうとしたら先輩にヤられそうになる。これをついてないと言わずなんて言うんだ。


「いっただきまー…ぐへぇ!!」

『あたしはねぇ、早く応接室戻りたいの!早く戻んなきゃどーなるかわかってんの!?ええ!?咬み殺されんだよあたしが!』


先日、ヒバリから持つことを許された愛用の木刀を男に叩き込む。


『喉渇いたんだって!だから授業中にも関わらずあたしを呼び出したんだって!買ったから早く戻りたいのになんで邪魔するかなぁもう!!』


そして数分後。気づけば先輩方はボロボロの状態で倒れていた。やっぱこっちでも剣術習ってよかった。





(とりあえず早くいかなきゃ…!)
(か、咬み殺されないかな?大丈夫かな!?)
(まあいざとなったらコイツらを理由にすればいいか)

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