短編 | ナノ


「もんじゃ食べに行きましょう!もんじゃ!!」


チラシをピラピラさせながら、夏目が仁王立ちであたし達の前に立った。


『もんじゃ?なんで?』

「友達と帰り道にもんじゃ!憧れじゃないですか!」

「私は勉強があるからパス」

「シズクが行かないなら俺も行かねぇ」

「ちょ、お前らな…」

「ええええ、なんで二人とも断るんです!五人でもんじゃ行きましょうよ!五人で!!」


今ならこのチラシを持っていけば10%安くなるんですって!お得ですよお得!と興奮気味にチラシをひらひらさせる夏目。行く気満々である。


『あー…あたしは別に行ってもいいけど…』

「! ほんとですか風香さん!!」

『うえ!?あ…いや…うん、別に…』

「俺も構わないよー」

「ササヤンくんもですか!やったー!!」

『シズクもどうよ。たまにはいいんじゃないの、勉強の息抜きにさ』

「………まあ、別に、行ってもいい、けど」

「シズクが行くなら俺も行くー」


お前ほんとシズクのこと好きだな、なんて思いながら帰り支度を始める。夏目は本当に嬉しいみたいで、鼻歌を歌いながら帰り支度をしていた。



***



『(もぐもぐ)』

「風香さん ミッティーきいてくださいよー!今日も告白うんたらかんたら」

「ハル!ちょ、離れて座って!」

「俺はシズクとくっついてたい!」

「誰もきいてない!?ちょ、ひどくありませんか!?」

「俺はきいてるよ、夏目さん」

「ササヤンくんだけですよぅ、ちゃんと話きいてくれてるの!」

『(もぐもぐ)』

「風香さん食べてばっかり〜!」


もんじゃ屋さんについてすぐ食べ始めたあたし達。実はお腹が減っていたのでしゃべらずに食べることを優先させたあたしは悪くないと思う。

球技祭とか、文化祭とか、大変だったけどなんだかんだで楽しかったなあ、なんてことをふと思った。


『もんじゃおいしい』

「風香さん風香さん」

『んう?どーしたの夏目』

「楽しいですか?」

『? 楽しい、けど…なに急に?』

「みっちゃんさんに頼まれたんですよぅ、風香さんのこと」

『満善に?』


意味がわからないのがますます意味がわからなくなった。なんで急に満善が出てくんの?ちょ、え、なに?


「あ、それ俺も頼まれたよ」

「俺も頼まれたぞー」

「私も」

『兄さんはみんなになにを頼んでるの!?』


意味がわからない!頼むってなに!?


「風香さんのことが心配なんですよ、みっちゃんさんは」

『、は』

「まあ普段は学校だしみっちゃんとそんないねーだろ。みっちゃん心配症だからなー」

『え』

「安心しろ!元気に過ごしてるって伝えてある!」

『報告してんの!?』

「おう、毎日な」

『心配症がいき過ぎてんだよあいつは!!!』


なんでみんな微笑ましいな〜みたいな目で見てくんの…!やめて恥ずかしい…!!


『あー…でも、まあ』

「ん?」

『楽しいよ、すっごく』


昔は友達と呼べるような相手はいなかったからなぁ。話し相手は兄さんかハルで、たまに優山が嫌がらせしにきたり。
高校に入って、また同じような世界なんだろうなって思ってたらガリ勉女にハルが惚れてそっからなんだかんだで仲良くなって。


『……もんじゃおいしい』

「? どした風香。顔真っ赤だぞ」

『なんでもない。ほらハルももんじゃ食べろ。おいしいぞ』

「あっづ!いきなりあーんするなよ!それとあーんならシズクにやってほしかった!」

「やらないよ私」

「!?」

『シズク、あーん』

「え、あ、あーん…?」

『やだこの子超可愛い』

「シズク、ほら、あーん」

「やらないよ私」

「なんで!!?」


恥ずかしいから、なんて言えないシズクはぷいっと顔をそらした。





青春を謳歌しようぜ
(…満善)
(ん?どした?)
(……なんでもない)
(?)
(いつもありがと。……お兄ちゃん)
(!? !!?)
(あれ…?声に出てた…!?)


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とな怪では優山が好きです。あとみっちゃん。優山が嫌がらせ(という名の愛の行動)をする話とか書きたいです←

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