短編 | ナノ


気がついたら目の前に化け物がいた。


『ええええええ!?』


なんで!?あれ、あたし見廻り(という名のサボり)中じゃなかったっけ!?いつの間にこんな化け物が出てくるような場所に移動し……てないよ!ていうか江戸にこんな化け物いないよ!!

あわあわしながら、とりあえずこいつを斬るしかないだろと思い、愛刀である椿は使わずに――近藤さんから(無断で)拝借してきた虎徹ちゃんで戦いを挑んでみた。

そしてあと少しで刃が届く、という時に…化け物によって虎徹ちゃんが振り払われた。


『あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙こてっちゃぁぁぁん!!!』


バキって音したけど大丈夫かな!?
急いで確認する。大丈夫――じゃなかった!綺麗に真っ二つに割れてるや!言い訳できないどうしよう!
そんなことを考えてるあたしは、化け物が近づいてるなんて気づかなくて。まあ、気づいたとしても戦う術がないから逃げるしかないんだけれど。

と、その時だった。



「お姉さん、ちょっと離れててね」



茶色の髪の、青色の服を着た青年が、あたしを庇うように立ち、化け物を一刀両断したのは。


「ふう…お姉さん大丈夫?立てる?」


虎徹ちゃんでもまったく歯が立たなかった化け物を、黄色のブレードみたいな不思議な形をした刀で斬り裂いた青年。

あたしより年下…かな。大人びて見えるけれど、なんかそんな感じがする。
まあ年下に腰が抜けたなんてそんなこと言えるわけがないので、『全然へーき。ありがとね』と言っておいた。だが彼はそこから動こうとせず、無言であたしの腕をとり自分の方へ引き寄せた。思わず『は、』と声が出る。え、何が起こったの。


「無理しちゃダメだよ、お姉さん」

『え?え?』

「腰、抜けてるんでしょ」

『そんなことないデスヨ』

「無理しちゃダメだよ。それより、なんでこんなところにいるの?警戒区域内に入っちゃダメって言われなかった?」


警戒区域?聞きなれない単語に思わず首をかしげる。その反応を見て、彼は嘘だろ…みたいな顔をしていた。ちょっと待ってどーいうこと。


「…お姉さん、トリガー持ってないのにトリオン兵に挑もうとしてたよね。そんな危険なことしちゃダメだよ…」

『トリガー?トリオン兵?』


またまた聞きなれない単語だ。トリガーって引き金って意味だよな…。トリオン兵は……知らないよ!聞いたことないよそんなの!!
青年は「ほんとに…うそだろ…」と呟き頭を抱えていた。おいどーいう意味だコラ。


「最後に質問ね」

『うん?』

「三門市って知ってる?」

『え、知らない』


青年は「これで未来が一つ確定した」と呟いた。……どーいうこと!?なに、未来が一つ確定したって!


「おれは実力派エリート迅悠一」

『え』


まじかこいつ自分で実力派とか言ってるよエリートとか言ってるようわあああできればお近づきになりたくないな。
ちなみにエリート(笑)でどっかの白い服を着たエリート(自称)を思い出したのは秘密である。


「お姉さんは?」

『日比野、風香…』

「風香さんね。今からちょっとついてきてもらいたいんだけどいい?」

『断る』

「えっ…」

『なんで断ることが不思議みたいな顔してんの!?あたし達初対面!ついていくことが当たり前、みたいな顔しないでくれる!?』

「ついてきてくれると思ってた」

『初対面ですけど!!』

「会わせたい人がいるんだ」

『だが断る』





その世界で引き金を引こうか
(まあ結局お姉さんは折れてくれるんだけどね)
(何その自信満々な表情。腹立つな)
(お姉さんひどいね…。さ、行こうか)
(行かねぇよ)
(城戸さんに報告してー、ボスに紹介してー、それからー、)
(行かねぇっつってんだろ話きけコノヤロー)


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銀色×WTでした!やるなら最初は迅さんと絡ませたいな、と思いまして。
この続編とかいつか書きたいな。

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