死にたくない、と思い始めたのはいつの頃からだろう。
なんでそう思い始めたんだろう。
なぜ?どうして?

……ああ、思い出した。銀時のおかげだ。

確か…そう、彼が言ってくれた言葉がそう思わせてくれたんだ。



***



いつ死んでもいい。先生の寺子屋にいたあたしはそう思っていた。
銀時が来てからも、晋助とヅラが来てからもその思いは変わらなかった。




数年後、先生は幕府の連中に連れていかれた。

なんで。
どうして。
先生がなにをしたっていうの。

どれだけ叫んでも彼らが振り返ることはなかった。
先生が振り返ることは、なかった。


叫んで泣いて、もうどうでもいいやって思った。もちろん、銀時達の前でそれを言うつもりはないけれど。




それからさらに数年経って、あたし達は攘夷戦争に参加した。

辰馬とも出会い、たくさんたくさん戦った。


そんな時だった。――銀時が、先生の首を斬ったのは。


『――っ!』


涙が出そうだった。

やめてくれと晋助が叫んだ。


先生の首が宙を舞った。


『あ…ああ…』


死にたい。
どんなにそう思ったことだろう。

死にたい。
でも死んでなにになる?

死にたい。
なぜ?

生きたい。
あたしは…生きたいの?






それからあたしは意識はない。たぶん、無心で、無我夢中で、敵を斬っていたんだと思う。




『ぎ…んと…き…?』

「! 風香…!」


目が覚めた時、一番最初に見たのは銀髪のアイツだった。
自分だって相当深手負ってるくせにあたしが起きるまで待ってたの?バカだなぁ、ほんと。


「ごめん、ごめんな」

『ぎんと…』

「ごめん…っ」


あたしの肩に頭をあて、繰り返しごめんと言う銀時。何度も、何度も。

後悔してないはずがない。悔しくないはずがない。苦しくないはずがない。哀しくないはずがない。

結局、銀時にすべての咎を背負わせてしまったのだ。


「おれが…おれのせいで…っ」

『ぎんとき…』

「頼むから、お前は、生きてくれ」

『? どしたの、急に』

「絶対、生きるって約束しろ」

『なんで…』

「俺が、生きててほしいと願ってるから」


くしゃくしゃの、涙まみれの顔で、あたしを励まそうとして銀時は精一杯の笑顔を見せた。
うん、とあたしは答えた。






(銀時がそれを望むのなら)
(あたしに生きてほしいと望むのなら)
(それが銀時の願いなら)


title:空を飛ぶ5つの方法


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