任務は面倒だけど報酬あるなら頑張ります





あたしは本部の命令で三門市の端の方にいる近界民ネイバーを駆除していた。


『もしもーし、こちら日比野』

《風香か。そっちはどうだ?》

『もう終わったよ。帰っていい?』

《いや、そこから数km離れたところにまた近界民が現れた。頼んだぞ》

『うええーめんどくさ…』


はあ、とため息を吐きながらその場を移動する。
そこには近界民の死骸がゴロゴロ転がっていて、正直見れたもんじゃなかった。一般人が見たら気絶モンだな、これ。


《そこから南西へ5kmだ》

『りょーかいりょーかい』

《終わったらなにかおごってやるから頑張りなさい》

『マジで!?忍田さん男前!ちょ、張り切ってくるわ!』


忍田さんと通信を終え、あたしは少し急ぎ足で近界民が現れた場所に向かった。



***



近界民を倒し、帰ってきていいと許可がおりたのでトリオン体のまま移動する。わざわざトリガー解除オフすんの面倒だし、何よりトリオン体だと疲れないから楽なのだ。


さてさて今日はみんなが思っている謎。
トリオンとはなにか。
ネイバーとはなにか。
ボーダーとはなにか。
その問いに答えたいと思う。


三門市は4年半前にゲートが開いてから度々近界民ネイバーが現れるようになっていた。しかし民間人はそれに慌てることはなく、普通に暮らしているのだった。
ちなみにあたしはそんな普通の生活とは程遠い生活を送っている。

界境防衛機関“ボーダー”。
それがあたしの所属している組織だ。

ボーダーは4年半前の第一次近界民侵攻の時にネイバーを倒した組織で、言うなれば正義の味方ってやつだ。


そんなあたしは本部直属に所属──というワケではなく、玉狛支部というところに所属している。
玉狛は使わなくなった川の何かを調査する施設を買い取ったもので、まあそれなりの広さはある。


あたしは本部所属っていうワケではないが、使いやすい、連携が取りやすいなどといった理由で本部直属部隊に混じって任務へ行くことなどもある。…面倒くさいなんてそんなこと思ってても言えないよね!


そんなことを考えながら警戒区域の家の屋根をピョンピョン跳んでいく。すると10分くらいで本部に着いた。



***



『お疲れでーす。日比野風香、ただいま帰還しましたー』

「お疲れ、風香」

『ホントですよ忍田さーん。たまたまあたしが非番で、たまたまあたしが三門市の端の方に出かけてて、たまたまそこに近界民が現れたから退治できたんですよー』

「まあまあ。焼肉連れてってやるから落ち着きなさい」

『忍田さんマジかっこいいっす』


司令室に入り、愚痴をこぼしながらもさっきの状況を城戸さんに説明していく。
近界民は全部で20以上現れたこと。幸いにも怪我人は一人もいなかったこと。建物の損傷が激しく早急に対処してほしいこと。
説明が終わると、城戸さんからご苦労、と一言もらった。





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