近界民殺すマン
最近本部に呼ばれること多いなーと考えてる今日この頃。おかしいな、あたし玉狛所属のはずなのに。
城戸さんに呼ばれた理由は、ついこの間玉狛に来た近界民…遊真についてだ。そんなもん迅にでもボスにでも聞いとけよと思ったのは秘密である。
話も終わり、沢村さんに癒してもらったあと本部をぶらぶら歩いていた。
玉狛に帰ろうか悩んでる時、目の前を横切ったのは目の下に真っ黒な隈をつくった三輪だった。
なにやってんのアイツ。なんで寝てないの。
『みーわ』
「っ!…なんだ、風香さんか」
『はいこれあげる。おごりね』
「…ありがとう、ございます」
自販機で買った飲み物を渡すと、三輪は少し表情を和らげた。うんうん、高校生はもう少し子供らしくした方がいいよ。かわいいなその表情。
『……遊真のことでしょ、隈の原因』
「………」
無言は肯定ととるよー、と呟きあたしも自販機で買ったカフェオレを飲む。うん、おいしい。
「…城戸さんの考えてることがわかりません」
姉を近界民に殺され、その復讐のためにボーダーに入った三輪。
復讐のため、近界民を殺すため、そのためにボーダーに入ったはずの彼なのに、そのボーダーが近界民まで引きずり込むなんて、とかなんとか考えてるんだろーな。
『…まああたしにも城戸さんの考えてることとかは理解できないけど、少なくとも“空閑遊真”はボーダーに危害を加えるようなやつじゃないよ』
「――、俺は…」
“空閑遊真”は確かにボーダーに危害は加えない…と思う。
でも、三輪からしたらそんなことじゃないんだろうな。姉を目の前で近界民を殺されたんだから、当然と言えば当然だけど。
『まあでも、迅は意味のないことはしない奴だから』
「…同じことを、」
『うん?』
「嵐山さんにも同じことを言われた。迅は意味のないことはしないって」
そして城戸さんの遊真をボーダーに入れるということで三輪はキャパオーバーしてしまったらしい。まったく頭の固い奴め。
『アンタは色々複雑に考えすぎなんだよ。もっと大雑把に考えなって、大雑把に』
「……それが出来れば苦労はしない」
『あはー、知ってる』
「…風香さんは、なんで玉狛なんですか。なんで、本部所属じゃないんですか」
本部所属だったらもっと一緒にいられたのに、という呟きをあたしは聞き逃さなかった。くそ、こいつほんとかわいいな!
『たいした理由はないよ。ボスと迅に誘われたから入った。それだけ』
「じゃあ、もし俺が迅より先に風香さんを誘ってたら…本部所属でしたか?」
『かもね』
「…だったら早く誘っておけばよかった」
ダメだ。三輪がかわいすぎる。なんでこの子今日こんなにデレてるの。天使だよ。天使がいる。
『まあほら、玉狛所属っていっても本部によく来るし。たまに模擬戦してるし。それに、たまに会えた方が特別って感じするでしょ』
「………」
『どーしたどーした。今日は甘えただなぁ』
「………」
『あれ?三輪?三輪くーん?』
「………zzz」
『寝てた…っ!』
ラウンジであたしに抱きつきながら三輪は寝た。ああああああやばいほんとかわいい。なんで後輩ってこんなにかわいいの。天使か。
『…もっと楽に生きてくれればいいのになぁ』
復讐なんかにとらわれないで、出水や米屋達と楽しく過ごしてくれればいいのに。そしたら、きっと最高の未来が待ってるだろうに。
そんなことを考えながら、三輪のサラサラの髪を撫でた。
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