毒舌王子菊池原





本部の廊下を歩いてる時だった。


「ゲッ」


そんな声が聞こえたのは。


『ちょっときくっちー、げって何よげって。そんな嬉しそうな顔しないでよもうっ』

「は?何言ってるんですか?」

『そんなマジなトーンで返さなくてもいいじゃん、ねぇ歌川』

「そうだぞ菊池原。先輩だぞ」

『歌川まじいい子』


なんで玉狛の人間がいるのうわぁやだー…とか思ってるんだろうな菊池原は!わかってるよお姉さんは!悲しくなんかないもん!ないもん!!


「大体、なんで風香サンが本部にいるんですか?仕事?早く終わらせて帰ってくださいよ」

『どうしよう久々の再会なのにこんなに毒吐かれるとは思ってなかった。お姉さん心折れそう』

「すみません風香さん。こいつ久々に風香さんに会えて喜んでるだけなので気にしないでやってください」

「なっ…ちょっといい加減なこと言うのやめてよね歌川。バカじゃないの」

『えっ、ツンデレ?きくっちーってツンデレだったの?』

「は?」

『そんなドスのきいた声出さなくても』


マジギレか。今のはちょっと怖かったぞ。いや真面目に。


『あ、そろそろ行かないと忍田さんに怒られるわ』

「…え」

『? どーした、きくっちー』

「………別に。あときくっちーってやめてもらっていいですか」

『えー…栞が使っててかわいいなーって思ったのに…』

「…………」

『なんでそんな顔するの』


菊池原は嫌そうな、だけど嬉しそうな…そんな複雑な顔をしていた。歌川は菊池原の気持ちがわかるようで、頭をポンポンとなでていた。すぐに振り払われてたけど。


『じゃ、またね!菊池原、歌川!』

「………」

「はい、また」


菊池原がボソボソとなにかを呟いていたが…聴覚強化のサイドエフェクトを持っていないあたしは、彼が何を言っていたか聞き取ることはできなかった。







「………別に、別に、きくっちーでも…いい、とか…思ってない…」

「菊池原、風香さんはもういないぞ」

「知ってるし。だから言ったんだし。そんなのもわかんないの」

「………」





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