いつでも頼っていいんだよ





黒トリガー争奪のあと、迅は風刃を本部に…城戸さんに渡してきたらしい。
らしい、というのは、その話は迅本人から聞いた話じゃなくて太刀川さんと風間さんから聞いたからだ。
その話を聞いたあたしは、迅の部屋へ行き彼に問いかける。


『…なんで、風刃渡しちゃったの』

「それが最善の未来だからだよ」


苦笑しながら迅は告げる。
最善の未来だから仕方ない、未来はもう動き出してると。


『風刃は、最上さんなんだよ』

「うん」

『迅が持ってるべきものだったんだよ』

「…うん」

『迅が、持ってなきゃ…っダメだったんだよ…っ』

「……うん」


ごめん、

迅は謝って、あたしを引き寄せた。
迅の胸に頭が当たる。そして、力強く、ぎゅうっと抱きしめられた。


「最善の、未来だったんだ」

『…うん』

「おれが持ってるより、秀次とかが持ってる方が…っ」

『…ん』

「ほんとはっ、ほんとは…っ」

『我慢なんてしなくていいんだよ』


そう言うと、迅はさっきとは比べ物にならないくらいの力で抱きしめてきた。
正直痛いけれど、そんなになるまで迅は溜め込んでたんだなって思うと不思議と我慢できた。


『……さっきはあんなこと言ったけどさ、迅は正しいよ』

「風香…?」

『迅はあたし達にいつも正しい未来を教えてくれる』


それは、時には残酷なことだ。誰かを救うために誰かを犠牲にするのだから。
でも。だからこそ。あたしや周りが迅のストッパーになってあげないとだめなのだ。


『大丈夫。大丈夫だよ、迅』

「……」

『迅は、迅の正しいと思ったことをやればいいんだよ』


とん、とん、と。迅が安心するように、少しでも楽になるように。背中をなでる。


「…ありがとう、風香」

『どういたしまして、迅』

「このまま、寝てもいい?」

『いいよ』

「ごめん、」


ありがとう、と続けると数秒後に寝息が聞こえてきた。
こんなになるまで一人で抱え込んでたんだよなぁ。そう思いながら、あたしは迅の頭をなで続けた。

明日、迅が元気になってますように。そう願いをかけて。





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