ケガの心配
青城と練習試合が決まったはいいけれど、相手の条件がムカつく内容だった。
『飛雄をセッターとしてフルで出すこと≠ェ条件ってなんですかそれ』
「烏野自体に興味は無いけど影山だけはとりあえず警戒しときたいってことですか。なんスかナメてんスかペロペロですか」
「い…いや、そういう嫌な感じじゃなくてね。えーと…」
武ちゃんが困っているのがわかるけど、そんなことを気にしてる余裕は今のあたしにはなかった。
こんなムカつく条件出してくる奴はアイツしかいないホントムカつく…!
「い…良いじゃないか。こんなチャンスそう無いだろ」
「良いんスかスガさん!烏野の正セッター スガさんじゃないスか!」
「…俺は…俺は、日向と影山のあの攻撃が4強相手にどのくらい通用するのか見てみたい」
大地さんとスガさんはアイコンタクトを交わし、武ちゃんに詳細をお願いした。
日程は来週の火曜。
短い時間だから1試合だけ。
学校のバスを借りて行くということ。
***
練習が終わり片付けも終わり、スガさんと坂ノ下商店の前を歩いていたら後ろから「菅原さん!」と声がした。飛雄だった。
「今回は俺自動的にスタメンですけど、次はちゃんと実力でレギュラーとります!」
「えっ!?」
「えっ?」
そう宣言した飛雄にスガさんはなんでそんなことを言うんだ、みたいな目で飛雄を見た。…が、飛雄はその目の意味がわかっていなかったようだった。
「あ、いや…影山は俺なんか眼中に無いと思ってたから以外で…」
「? 何でですか?」
「体格も実力も断然お前の方が上だろ?」
「経験≠フ差はそう簡単に埋まるもんじゃないです…」
それと…と続ける。
後ろからは「スガさーん!」「スガ〜!」「菅原さーん!!」と声がきこえてきた。「あ、風香もいたのか」田中ぶっ殺す。
「ほ…他のメンバーからの…し…し…信頼、とか……」
『(中学のあの試合相当応えてんだな、本人的に)』
「俺、負けません!」
「…うん。俺も負けない」
二人が宣戦布告をしたあと、田中が大地さんが肉まんオゴってくれるというありがたい情報を持ってきてくれた。
「でもさ、影山。青葉城西って北川第一の選手の大部分が進む高校だよな」
「ああ。まあそうっスね。ですよね、風香さん」
『そうだと思うよー。どしてですか?』
「いやその〜やり辛くないかなと思ってさ。風香も北一のマネやってたんだろ?」
「同じチームだったら考えるかもしれないけど…」
『まあマネとして支えてはいたけど、今は烏野のマネだし』
『「戦うならただ全力でやるだけです」』
…って言ってもあたしは戦うことはできないんだけれど。
「……そうか。そうだな」
「でも良いんすかスガさん!俺は…俺は納得いかないっつうかっ!」
「…そりゃあ悔しいけど…でも、影山が中学ん時と同じだと思ってたら大間違いだって見してやりたいじゃん!」
スガさんは一瞬哀しそうな笑みを見せたが、すぐに笑顔で飛雄の肩を叩いた。
「……そうだな。怖いのは影山単品≠カゃないってとこ、見してやろう。
なあ日向!」
くるっと振り返った大地さんの視線の先にはモグモグと肉まんを食べている日向の姿。
その後日向は田中と飛雄にシメられ、その声がうるさいと坂ノ下商店のおにーさんに怒られていた。