持たざる者≠フことば



とうとうやってきた土曜日。
ドリンクを作っていて知らなかったけれど、月島達の方には大地さんが入るらしい。

月島、山口というのは今日 日向、飛雄と戦う一年生だ。
昨日顔合わせたけどなんつーかこう…予想以上の奴だった。っていうのが第一印象。
今の印象は…


「あっ 風香サンいたんですか?小さくて見えませんでした、スミマセーン」

『うっさい黙れ月島!』

「小さいのは否定しないんですね〜」

『コイツほんっとムカつく!!』


クソムカつく後輩。
月島はケタケタと笑って「あー オホンッ」とわざとらしく咳をした。


「小さいのと田中さん、どっち先に潰…抑えましょうかあ。あっ そうそう、王様が負けるとこも見たいですよねえ」

「ちょっ…ツッキー聞こえてるんじゃ…?ヤバイよっ」

「聞こえるように言ってんだろうが。冷静さを欠いてくれると有難いなあ」

『アンタほんとイイ性格してるよね…』

「それはドーモ」


褒めてねーよ。


「ねえねえっ 今の聞いたあ?あ〜んな事言っちゃって。月島クンてばもうホント、

擂り潰す!!」

『!!』


びっ…びっくりしたー!田中がいきなり『ねえねえっ』なんて話し始めるからアッチ系についに目覚めたのかと思った!ちょっ もう心臓に悪いからやめてくんない!?



***



ついに始まった試合。あたしと清子さんは得点係をやっている。
まずは田中が一本決めた。叫んで上着を脱ぎみんなから批判を受けていた。まあそりゃそうだろうな。

次にボールが上がったのが日向。すごいジャンプ力だ。だけどそれは月島に止められてしまう。
やっぱり身長の差は大きい。


「昨日もビックリしたけど、君よく跳ぶねぇ!それであとほォ〜んの30cm程身長があればスーパースターだったかもね」


日向がもう一本!!と叫んでから随分と時間が立った気がする。
田中の方は結構決まっているけれど、日向はブロックにつかまってばっかりだ。


「ほらほら、ブロックにかかりっぱなしだよ?王様のトス≠竄黷ホいいじゃん。ブロックを置き去りにするトス!ついでに仲間スパイカーも置き去りにしちゃうヤツね」

『……』


山口はサーブに失敗し、飛雄がサーブを打つ。
飛雄のジャンプサーブな確かに強力だけど、大地さんの武器は攻撃より安定したレシーブ。守備力はハンパない。


「…何点か稼げると思ったか?」

「?」

「…突出した才能は無くとも、二年分お前らより長く身体に刷り込んで来たレシーブだ。簡単に崩せると思うなよ」


だ…大地さんかっけェェ!!


「ホラ王様!そろそろ本気出した方がいいんじゃない?」

「なんなんだお前!昨日からつっかかりやがって!!王様のトスってなんだ!!!」

「君、影山コイツが何で王様≠チて呼ばれるのか知らないの?」


日向は、飛雄がすごく上手だから他の学校の連中がビビってそう呼んだのだと思っていたらしい。


「…噂じゃコート上の王様≠チて異名北川第一の連中がつけたらしいじゃん。王様≠フチームメイトがさ。意味は…

自己チューの王様。横暴な独裁者」

「………」

「噂だけは聞いたことあったけど、あの試合見て納得いったよ。横暴が行き過ぎてあの決勝、ベンチに下げられてたもんね」


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