乾き(小十佐)
「つっ…」
「ん?」
放課後、下校途中の下り坂にて。
声の主に振り返ると、小十郎はしかめ面をしていた。
「どーしたの? いつもより怖い顔しちゃって」
「いつもより、は余計だろうが。…唇が切れただけだ」
「あー、けっこう痛いよね、それ」
佐助は呑気に言ったあと、あ、と声を上げてポケットをあさりはじめた。
「あったあった。ちょっとじっとしてて?」
「あ…?」
佐助は取り出したリップを指ですくい、小十郎の唇に塗った。
その感触に、小十郎は思わず息を飲んだ。
「はい、これで良し。…ん、何その顔…キスしたくなった?」
悪戯っぽく笑う佐助に、礼だ、と言って小十郎は唇を塞いだ。
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