痣フェチ×不良
「なに、喧嘩?怪我してるじゃん」
リビングへとつながる扉を開くと呆れを多分に含んだ声に出迎えられた。
「うっせえ。売られたから買ったまでだ。俺は悪かねえよ」
大股でソファに近づき迷うことなく真崎の横に陣取る。質のいいソファはそんな荒々しい田部の動きに軋み一つあげることなく優しく体を包み込んだ。
「早く制服脱いできなよ。皺になるから」
真崎は手元の雑誌から目を離すことなく田部に告げるが、田部からは「あー、わかってる」という返事が返ってくるものの動く気配がない。チラッと視線を向けると、田部はソファに深く体を預けて目を瞑っている。田部に動く気がないということを悟った真崎は一つ大きな溜息をつきパタン、と雑誌を閉じた。
パタパタとスリッパの音が遠ざかっていくのを耳にしながら田部は何とも言えない倦怠感に襲われていた。やはり一人で五人の先輩を相手するのはきつかったらしい。蹴りをくらった腹も、切れてしまった唇もじくじくとした痛みを生み始めている。明日は熱が出るかも、なんて考えているとデコをぺちんと叩かれた。
「手当、するから。やられたところは?」
「……顔、と、腹も一発くらった」
目を開けると救急箱を揺らしながらこちらを見下ろす真崎と視線がぶつかる。見つめあうような状態がなんとなく気恥ずかしく、田部はふい、と視線をそらした。それから手当てしやすいよう無言でソファに座りなおし、足元にしゃがんだ真崎を見下ろす。以外に睫毛が長い、とか旋毛が2つある、などぼんやりと観察していると、真崎からふと声をかけられた。
「なあ田部」
「あ?」
「この痣、喧嘩してできたのか?」
「ああ」
「相手は先輩?」
「まあ」
「じゃあ写真撮ってもいい?」
「おう」
流れでつい了承してしまったが、よくよく考えるとおかしな質問に田部は首を傾げる。
「ん、写真?おいそれって……」
どういうことだ、と聞こうとすると既にカメラを構えた真崎が目に入る。いつの間に用意したのか本格的なカメラをギラギラした目で覗き込む真崎に怯みながらも田部は言葉を続けた。
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