後輩×ガチムチ乙メン
「整列、礼」
と凛とした声が体育館に響き渡り、今日の部活は終了する。
「先輩、先輩」
俺は片付けもそこそこに、柔道部主将である先輩に駆け寄った。
「ん、どうした尾上」
頭一つ分俺の方が小さいため見上げる形になってしまうのがいささか悔しいが、下から見る先輩も素敵だな、と思う。一度も染めたことはないであろう艶やかな黒髪に、少しきつい印象を与えるつり目。部活終わりのためか、米神から頬へと伝わり流れ落ちていく汗は扇情的で、自身の唾をのみこむ音がやけに大きく聞こえた。少し肌蹴た道着からのぞく厚い胸板に噛みつき自身の跡を残してやりたい、などと不埒な考えを抱き始めたところで、もう一度先輩から声がかかる。
「尾上、どうかしたのか」
先輩が俺の顔を覗き込むように聞いてきたため、ぐっと距離が縮まる。先輩のその厚い唇にむしゃぶりつきたい気持ちを理性で押しとどめて無理やり笑顔を作る。
「先輩、今日これから時間ありますか」
俺が先輩に対してどんな思いを寄せているのか知らずに、まっすぐな目で、大丈夫だ、と答える先輩は地上に舞い降りた天使かと思うほど可愛かった。
道着から制服に着替え町に繰り出す。先輩と二人並んで歩いていると何だかデートのような気分になってくる。少しは自分のことを意識してくれているだろうか、と先輩のほうに顔を向けると、さっきまでいたはずの先輩がいない。えっ、先輩?とあたりを見回すとある一点を見つめて動かない先輩を見つけた。
「もう、いきなりいなくなるんでびっくりしましたよ。先輩何見てるんですか」
立ち止まっている先輩に近づき先輩の目線をたどる。その先には、
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