ヤンデレ2×総長


「あーおっ」

バーのカウンターでノンアルコール飲料を一人飲んでいると、がばっと後ろから抱きつかれる。ここで自身のことをそんな風に呼ぶのは2人しかいない。加えて抱きついてくるのは決まって一人。これは……、

「ナツメか」
「んふふー、せーかい」

名前を呼んでやると嬉しそうに首元に擦り寄ってくる。その姿はまるで猫のようだ。染めているにもかかわらず、まったく傷んでいない綺麗な金茶の髪を優しく梳いてやる。もっと、もっと、と体を近づけてくるナツメは案外子供体温で、肌寒くなってきた季節にはとてもありがたい。
が、バシッと痛そうな音が響くと共に、あっさりと温もりは離れていってしまった。
その代わり、と言ってはなんだが、ナツメとはまた種類の違う、耳に心地よいテノールが直接蒼の鼓膜を震わせる。

「いつまでひっついてんだ、お前は。アオも、こんな奴に背中預けてんじゃねえよ。お前の背中は俺のモンだろうが」

どさり、と荒々しく隣に座り、肩に腕をまわしてくるこいつは、レン。自身のことをアオ、と呼ぶもう一人の人物だ。

「レン、遅かったな。お前にしては珍しく時間かかったじゃねえの」

確か、今日は近くの廃工場で隣町のチームと喧嘩だったはずだ。レンが一人でいいと言ったから、部下数人を付けさせて送り出したのだが。いつもであれば、あの程度のチーム相手に10分と掛からないところを15分ほど掛けている。

「しょうがないよねえ。今回はお仕置きも兼ねてきたんだし」

どうかしたのか、とレンに問いかけようとしたのだが、レンとは逆隣に座っていたナツメによって遮られてしまった。

「お仕置き?」

耳慣れぬ言葉にナツメの方へ顔を向けると、食えない笑顔でにこにこと笑っている。

「そう、お仕置きー。レンのお仕置きは、ねちっこくてえげつないって有名なんだよ。怖いよねえ」


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