多苦悩処


「俺らはきっと地獄行きだな」

情事の余韻からしっとりと汗ばんだ和泉の肌を撫でながら、要はぽつりと呟いた。

「んだ、そりゃ。お前地獄とか信じてんのかよ」
「別にそういうわけじゃないけどさ」

和泉のナカに入ったままだったモノを引き抜くと、ごぽり、と白濁が流れ落ちる。「っん」と鼻にかかったような声を出す和泉にもう一度欲望を捻じ込みたくなるが、理性を総動員してなんとか思い留まる。が、要のそんな努力を嘲笑うかのように、和泉は自身の太腿を伝う白濁に指を絡ませた。真っ赤な舌でねっとりと舐めとり、壮絶な色気を放つその姿に、要は眩暈を感じずにはいられない。

「やっぱ精液なんてうまいもんじゃねえな。で、地獄がなんだって」

さっきの色気がまるで幻であったかのようにあっけらかんと言ってのける和泉に、はあ、と溜息が漏れた。相変わらず切り替えが早すぎて、要はいつも振り回されてしまう。情事後はなかなかベッドから動こうとしない和泉に後処理をしてやりながら、ゆっくりと口を開いた。

「宗教の時間に習ったろ。多苦悩処っつう地獄があるって」
「ああ?…知らねえ」
「和泉、お前また寝てのかよ」

呆れながらもそういうと、「だってねみいし」と詰まらなそうな声が返ってくる。

――まったく、こいつは……。そんな風だから教師に目を付けられるんだ。
ついつい小言を言ってしまいそうになるのをぐっと我慢して、話を続ける。こんなところをいちいちツッコんでいたらこいつとの会話は全く先に進まないのだ。

「多苦悩処っつうのは、なんつったか。……俺もそんな言うほど覚えてねえけど、男色家な奴が落ちる地獄なんだとよ」
「へえ。多苦悩処、なあ」

――それも悪かあないかもな。

くっくっ、と喉で笑いながらさらっと言ってのける和泉に要は問いかける。


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