図書館司書×生徒会長


頭が痛い、吐き気がする。ぐるぐると回る世界に止まりそうになる足を叱咤して、御園は意地だけで歩き続けた。今から行われる文化祭についての会議以外にもまだ予定は腐るほど詰まっている。こんなところで立ち止まっている暇などない。
目的地である会議室に何とか気力でたどり着き、腕時計で時間をチェックする。会議が始まる3分前。とりあえず間に合ったようで、安堵の溜息が漏れた。

「遅くなってしまい、済まない」

会議の際5分前には着席している、という暗黙の了解を破ってしまったことに罪悪感を抱きながら扉を開く。かつての仲間たち、生徒会メンバーと同様に冷え切った目を向けられるのだろうか、と不安が一瞬頭を過ぎった。心臓がありえないほどの速度で脈打っている。緊張しながら足を踏み入れた。が、想像と違い温かい目に迎えらたことで御園は面食らってしまった。

「あ、会長、大丈夫ですか」
「会長、睡眠と食事はちゃんと採られていますか」
「無理をなさってはいけませんよ、会長」

次々とかけられる自身を気遣った言葉に、安堵し思わず頬を緩めてしまったのは仕方のないことだと思う。多すぎる仕事量と一人でそれをこなす孤独感に、折れかけていた心を奮い立たせゆっくりと言葉を紡いだ。

「皆、ありがとう。俺は大丈夫だ。こうして気遣ってくれる人がいるうちは何とかやっていけるさ」

そう、やっていける。ここまで育ててくれた義理の両親のためにも、自身を生徒会長にと推してくれた生徒たちのためにも、こんなところで躓くわけにはいかないのだ。ぐっと拳を握りこむと掌に鈍い痛みが広がる。この時心があげた小さな悲鳴には気づかないふりをして、御園は声を張った。

「それじゃあ会議を始めよう。今日の議題は、一か月後の文化祭についてだ」



――カタカタカタカタ
机上に、床に、積み重ねられた書類に囲まれながら、一人寂しくキーボードをたたく。文化祭についての会議は2時間ほど前に終わっており、時刻はすでに午後7時をまわっていた。


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