会長様とプールの乱


「これは……、」

今し方理事会からおろされてきた書類。それを見た瞬間、俺は眉間による皺を抑えることができなかった。

今の状況を一言で表すなら、ピンチ。
まさしくピンチ。非常にまずい事態だ。
どれくらいピンチかというと、アレだ。財布の中に100円しか入ってないのに、コンビニで500円くらいの商品をレジに通しちゃったくらい。そんくらいヤバい。

(いやいやいやいや、何これえっ本気?本気なの?!マジでえっ嘘でしょ冗談だよな?なっ?)

こんなとんでもない爆弾を背負って来やがった書類を、一体誰が睨まずにいられるというのか。いやいないだろう。とりあえず俺は睨むね。そして、ぐっしゃぐしゃのぼろっぼろにして盛大に踏んづけた後、ゴミ箱にぽいするわ。

(あっそうしよう。うん俺、この書類見なかったことにする)

うんうんと一人で納得してその書類を亡き者にしようとした瞬間、すっと手元にあった書類が消えた。

「この書類が、どうかしたの?」
「あっ……」

(失敗したぁあああああああ)

消えた書類の行き先は副会長である東雲の手の中。俺は、この悪魔の書類を人知れず消去するというS級マル秘任務に、見事に失敗してしまった。

「プール開き?」

こてん、と首を傾げる東雲はそれはもう癒しオーラ全開なのだが、今はそれどころじゃない。

「えっプール?!何それ何それ俺にも見せてー」

目をきらきらさせながらはしゃいでいる会計時坂。

「プールって、また突然だな」

心底不思議そうな顔をしている書記不知火。
俺を除く三人の役員が、俺の席の前に集まってわいわいと盛り上がっている。
しかし俺にはその会話に混ざる余裕がなく、心の中を吹雪が吹き荒れる。


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