5

ドアを開け、辺りを見渡す。シーンと静まり返った家の中で物音はしない。ほっと胸を撫で下ろす。これなら、すぐに逃げられそうだ。出来るだけ音をたてないようにドアを閉めて、部屋のすぐ脇の階段を下りた。階段を下りれば、長い廊下がある。そして、その廊下を抜ければ広間の中央階段があり玄関はすぐ目の前にある。出来るだけ足音を抑えて走った。



「はぁっ……はぁっ……」



思ったより廊下が長い。しかし、あともう少しで玄関までたどり着く。心臓がバクバクと音を立てる。私は無我夢中で走った。



「はぁっ…はぁっ、……」



長い廊下を抜け、広間の中央階段まで来て玄関まであと少しだった。



「な、んで………」



中央階段の下には6人の青年が座っていた。そこには玄関で会った2人と私の血を吸った人もいる。なんでここにいるのか、学校に行ったんじゃなかったのかと頭の中はパニックだったが、この状況に青ざめていく私をどこか冷静に把握していた。



「おや、私の言いつけを守らなかったのですか?どうやら、躾がなっていませんね。」



「え…あの…」



「んふ、ビッチちゃんてば単純だねぇ。ボク達がいない時に逃げたそうなんてさ。こーんなに、簡単に引っかかるなんて。まあ、そんなおバカさんな所も悪くはないけど。」



「ライト、貴方が出ると話がこじれます。それに、勝手に手を出したんですから少し黙っていなさい。」



「はーい」



「では、状況を説明して差し上げましょう。一度だけですから、その空っぽな頭によく叩き込みなさい。」



「……はい…」



「まず、貴女は協会の意向により、逆巻家で預かる事になりました。そして、私達の父上からは丁重にもてなせと手紙が来ました。なので、正式にこれから貴女の帰る場所はこことなりました。何か質問はありますか?」



「……………いえ……」



「全く、そこの穀潰しが早々に私達に連絡をしておけばこんな遠回りな方法を取らずに済んだのですがね…」



「……」



眼鏡をかけた人がジロリとまるで虫けらを見るように一人を見た。だが、その人は寝ているのか微動だにしない。微妙な空気が流れた。



「はぁ…、それに貴女。」



「……はい…」



「父上の命が無ければ今回のように貴女の世話はしませんから、次からは自己管理はきちんとしなさい。餌としての自覚を持って頂きたい。いいですね?」



「……はい…」



先程から頷いてはいるが、全く頭に入っていない。彼が言ったように、私の頭は空っぽになってしまったのかとトンチンカンな事まで考え出す始末だ。その間にも、眼鏡の彼が一人一人を紹介してくれた。かろうじて、この六人が兄弟という事は理解出来た。それに、もう一つしっかりと理解出来ている事がある。こうして、玄関の前でおびき寄せるかのように待っていたという事は私は逃げられないという事だ。もう状況に、思考も感情もついていかなかった。






こんなの、誰に助けを請えばいいの…。



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